facebook instagram youtube RSS

高野山・吉野 (ATT.JAPAN ISSUE 33)

Travel

UpdateFebruary 26, 2018
ReleaseFebruary 26, 2018

高野山- 弘法大師の開いた静寂な山上宗教都市
吉野- 修験道の聖地と美しい桜

2004年7月、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産リストに登録された。近畿地方の和歌山・奈良・三重の三県にまたがる広大なエリアだが、そのなかでも比較的大阪からアクセスしやすい高野山・吉野をフィーチャーする。

高野山
特急こうやで大阪難波を発って1時間ばかり。紀ノ川の清流を超えるともう異郷に足を踏み入れたような気分になる。行く手には高野へ、大峰へ、熊野へと幾重にも深い山々がつらなる。

高野山は、関西、和歌山県の北部。弘法大師空海が開山、1200年近くの歴史を持つ真言密教の聖地。標高1000m前後の山々に囲まれた標高900mの平坦地に117もの寺院が並ぶ。俗界から隔絶された、まさに山上の宗教都市だ。天を突くような老杉の森は、陽の光さえさえぎる圧倒的な存在感だ。

高野山の見どころは大きく3つ。壇上伽藍、奥の院、そして金剛峰寺。霊場高野山の中でも大塔がある壇上と奥の院はとくに尊いところと信じられている。奥の院はいうまでもなく、弘法大師の御廟があるからである。

奥の院
一の橋から奥の院へ。2キロに及ぶ参拝道には、およそ20万基を超える織田信長、武田信玄、上杉謙信といった諸大名の墓石や、祈念碑、慰霊碑などが樹齢1000年を超える杉木立の中に立ち並ぶ。

日本人は、川をこの世とあの世の境だと考える。高野山の場合、それは三重構造になっている。いちばんはじめが、澱河(おどがわ)にかかる一の橋、正式には大橋、次が古谷橋川(こやはしかわ)にかかる中の橋、そして、いちばん奥には御廟川があり、御廟橋がある。御廟橋からは大師廟の霊域に入るとされ、参詣者は服装を正し、心を清めて足を踏み入れるようにという注意書きが出ている。

正面に建つ豪壮なお堂は燈籠堂。堂内には、ぎっしりとかかげられた万余にのぼる燈籠。参詣する人の目を驚かす。神秘的で荘厳な美しさが漂う。まさに燈明信仰の一大メッカであり、日本でもこれほどの燈明を集めているところはほかにないであろう。

燈籠堂を回りこむとすぐ後ろに弘法大師御廟がひそやかに建つ。聖地高野山に空海は今も生き、人々を救い続けると信じられている。たちのぼる線香の煙に蝋燭の灯がゆらぎ、澄み切った山の冷気が邪気を洗い流していく。

壇上伽藍
弘法大師がこの山を開いたとき最初に建立し、真言密教の根本道場とした壇上伽藍。朱塗りも鮮やかな根本大塔、金堂、西塔、東塔などが広々とした境内に建つ。まず講堂(金堂)が創設され、大塔、その他の講堂がそれに続いた。なかでも大塔の造営は大師とその弟子の二代にわたる大事業であったという。不動堂は山内に現存する最古の建物。

金剛峰寺
高野山のほぼ中央に建つ高野山真言宗の総本山金剛峰寺。豊臣秀吉が母の菩提を弔うために建てた、高野山内最大の寺。主殿の大広間には、狩野探幽の襖絵。日本最大の石庭は、雲海の中で雌雄一対の龍が奥殿を守る様を表現。140個の花崗岩が竜を、白砂が雲海を表す。

そのほかの見どころ
高野山は密教美術の宝庫でもある。重要文化財の建物も多いが、さらに仏画や美術品を収蔵しているのが高野山霊宝館。深い緑の木立の中に立つ朱色の楼門は、一山の総門である大門。両脇に金剛力士像を安置し、高さ25.1m。たびたび山火事や落雷に見舞われ、1705年に再建された。晴天の日はここから遠く淡路島が展望できる。

宿坊
高野山には53の宿坊がある。単なる宿泊所ではなく、精進料理の昼食だけでも食べられる。それぞれが伝統ある寺院で風雅な趣のある寺が多い。貴重な文化財を所蔵していたり、庭園が美しい寺なども。宿坊の朝は早い。6時頃から説法が始まる。写経なども気軽に体験できる。

吉野
奈良盆地をすぎて吉野川を渡ると、目の前には吉野山の険しい山容が姿を現す。かつては豊臣秀吉が諸大名を率いて盛大な花見の宴を催したこともある、古来、関西有数の桜の名所だ。その昔、役行者はこの山の桜を神の化身として、ここを、厳しい山岳修行を積んで悟りを開く修験道の聖地とした。全山を覆う桜、その満開の美しさは神々しいまでの風情を漂わせている。

吉野は金峯山寺の寺内町として発展し、源義経と静御前、南朝の後醍醐天皇など数多くの歴史の舞台となった。吉水(よしみず)神社、吉野水分神社(みくまり)、金峯神社(きんぷ)、などの社寺が点在。

吉野山
わが国屈指の桜の名所としても知られている。4月上旬、麓から桜が咲き始め、下旬まで山全体が徐々に桜色に染まっていく。200種3万本の木が増えられている。秀吉が1594年、総勢5000人もの家臣をお供に花見を行った。松尾芭蕉、島崎藤村、谷崎潤一郎など多くの文人や学者たちも訪れている。朝夕には雲海が広がり、見渡す限り、淡くほんのりと赤い花々のひろがりが山も谷も埋め尽くす雄大な光景は神秘的な雰囲気だ。

吉野山散策
下から順を追って吉野山を歩くコースが一般的。近鉄吉野駅で下車したら、ロープウェーで千本口駅から吉野山駅へ。金峯山寺へ。銅の鳥居と呼ばれる日本三大鳥居のひとつに出会い、続いて壮大な仁王門をくぐると檜皮葺の本堂の蔵王堂が現れる。高さ約30mの巨大な建造物で、木造古建築では東大寺大仏殿に次ぐ大きさ。金峯山寺から吉水神社までは両側にみやげ物や食堂が並ぶ細い参道が続く。吉水神社には日本最古の書院造りがあり、数々の宝物が保存されている。勝手神社、如意輪寺、竹林院をへて、花矢倉へ。吉野山はもちろん、あたりが一望できる絶景の地だ。吉野水分神社で戻る人が多いが、健脚であれば、さらに金峯神社、西行庵まで足を伸ばすといい。

高野山通訳ガイドクラブ 松山さん(高野山通訳ガイドクラブ代表)
ボランティアの通訳ガイド団体、高野山通訳ガイドクラブは2005年にできたばかりだが、松山さん自身は10年以上の経験を持つ通訳ガイドのベテラン。「アメリカをはじめ、オーストラリア、香港、台湾などからの旅行者の方が増えているように感じます。私たちは英語のガイドなのであまり接しませんが、フランスからの旅行者も増えているようですね。ガイドを頼まれる方は、宗教や建築、美術など幅広い興味があり、日本と外国の文化の違いについて知りたいという人が多いようです。予習をされてくる方もいて、そういう方ほど質問もいろいろされますね。ガイドをしていて、日本人と外国人の違いを痛感するそうだ。「たとえば奥の院とその参詣道。日本人だと参道のあの立派な杉並木を見て、歴史上の人物が数多く眠り、弘法大師が眠るという説明だけで、神秘的な聖地だと厳粛な気持ちになるのですが、外国人は違います。歴史上の人物の知識が少ない外国人の場合、なんの説明もなければ、杉の森にある広い墓地という感想しか持たない人もいるようなのです。せっかく高野山まで来て、それではもったいないし、私たちにとっても悲しいことです。」少しでも高野山の魅力を伝えようと、半日~1日かけてじっくり高野山を案内するそうだ。
http://www.geocities.jp/koyasan_i_g_c/

宿坊 – 蓮華定院
高野山の魅力のひとつは宿坊。英語で応対できる宿坊もいくつかある。ここ蓮華定院もそのひとつ。蓮華定院は、高野山が世界遺産に登録される以前からも外国人の旅行者が多い。女将さんによると、外国人の方は「長期間滞在される方が多いです。2週間滞在される方なども結構いますね。高野山が気に入られて何回もいらっしゃる方もいます。精進料理を楽しみにされているようです。あまり精進料理ばかりではつらいのでは、とこちらが気を遣って朝食にパンなどを用意したこともありますが、パンより和食を食べたい、といわれましたね。」住職も英語ができ、朝の説教は日本語と英語でされる。

高野山・吉野へのアクセス
【高野山へ】
南海難波駅から南海高野線特急、極楽橋下車。(1時間17分) 極楽橋から高野山駅へケーブル。(約5分)
【吉野へ】
近鉄あべの橋駅から吉野駅まで、近鉄の直通特急で1時間18分。