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奈良 (ATT.JAPAN ISSUE 52)

Travel

UpdateFebruary 26, 2018
ReleaseFebruary 26, 2018

関西地方の東部に位置する奈良県。北部には都市が広がり、南部には険しい山がそびえる。古代より多くの都城が置かれた歴史ある土地であり、「古都奈良の文化財」、「法隆寺地域の仏教建造物」、「紀伊山地の霊場と参詣道」と、3つの世界遺産を持つことでも知られている。今回は歴史的な遺産に加えのどかな自然もたっぷり楽しめる奈良県を紹介したい。



奈良市周辺

奈良公園周辺
近鉄奈良駅を出て東に向かって徒歩5分ほどで奈良公園に到着する。かわいい鹿が旅行者を迎えてくれる。鹿せんべいを片手に、鹿と触れ合ってみよう。
奈良公園を奥に進むと現れるのが東大寺。奈良時代(710-794)の中頃に創建された日本有数の大寺院。大仏のほかにも、奈良市街が一望できる二月堂や国宝の四天王像が収められた戒壇院なども必見。

東大寺の二月堂から木々に囲まれた参道を歩くこと10分ほど、朱塗りの社殿が美しい春日大社が見えてくる。創建は奈良時代。本殿や数多くの国宝を収蔵する宝物殿が見所。5月上旬には神苑の藤がみごと。2月と8月の万燈篭の夜には、境内にある燈篭に灯が灯され、幻想的な雰囲気につつまれる。
春日大社の西に位置するレトロな洋風建築は、奈良国立博物館の本館。日本で唯一の仏教美術を中心に収蔵する博物館で、特に本館の仏教彫刻は見ごたえがある。

興福寺は、奈良で一番高い五重塔があることでも有名。730年に建立されたが5回焼失し、現在の塔は1426年の再建。国宝館には、多数の寺宝が収蔵されているが、阿修羅像は必見。愁いを含んだ面差しは、多くの人々をひきつける。
奈良町

近鉄奈良駅からJR奈良駅にかけての一帯には個性派ぞろいの商店街が集まり、食事やおみやげショッピングにも最適なエリアだ。近鉄奈良駅から南へ、商店街を通って15分ほど歩くと、細い路地が交差する奈良町に到着する。世界遺産の元興寺を中心に発展した地域で、江戸時代(1603-1868)末期から明治時代(1868-1912)にかけて建てられた町人の住宅(町屋)が今も残り、風情が漂う。

奈良町の中心である元興寺は、明日香村にあった日本最古の本格的仏教寺院である法興寺(ほうこうじ)を718年に移築したのが始まりとされる古刹。多数の石仏が並ぶ境内は、花々が咲き乱れ、のんびりした雰囲気だ。
今西家書院では、室町時代(1336-1573)の書院造り様式を見ることができる。美しく手入れされた日本庭園も素晴らしい。

ならまち格子の家では、奈良町の伝統的な町屋が再現され、町屋の構造や人々の暮らしぶりを見ることができる。外から見えにくく、中からは外が良く見える格子の仕組みに感嘆させられる。
西の京
薬師寺は、西ノ京駅より徒歩5分ほどの場所に建つ。680年に天武天皇の発願によって創建された。朱塗りの回廊の奥に立つ東塔、西塔の姿が大変美しい。度重なる火災からも被害を免れた東塔は、1300年以上もここに立ち続ける国宝建築。一方、西塔は戦国時代に焼失したが、1981年に再建された。風雨を経た東塔と朱塗りの麗しい西塔、両塔を見比べてみるのも興味深い。

薬師寺の北に建つ唐招提寺は、平安時代(794-1192)に僧侶が戒律を学ぶための道場として、唐から渡来した鑑真によって創建された。薬師寺、唐招提寺の2寺はともに世界遺産だ。



平城遷都1300年祭

710年、奈良の地に日本の首都平城京が誕生した。2010年は、平城京が誕生してから1300年にあたり、これを記念して、世界遺産でもある平城宮跡をメイン会場に、奈良県内各地で平城遷都1300年祭が実施されている。平城宮跡最寄りの大和西大寺駅へは、近鉄奈良駅より徒歩で5分ほど。バスもある。
復元された建物の見学や、当時の人々の暮らし体験が面白い。
10年をかけてかつての姿に復元された第一次大極殿(だいいちじだいごくでん)。平城宮最大の宮殿であり、天皇の即位式や外国使節との面会など、国の最も重要な儀式のために使われていた。建築様式や、東西南北を司る神々、四神(ししん)が描かれた内壁が見所。
平城京歴史館では、中国大陸や朝鮮半島との交流と、そこから発展した日本の国づくりの歴史を大型スクリーンや展示物で見ることができる。復元された原寸大の遣唐使船からは、進取の精神で唐を訪れた先人達の気概に触れることができる。
平城京なりきり体験館は、往時の人々の衣装や仕事、平城宮跡での遺物発掘調査などを体験できる施設。人々の暮らしぶりをうかがい知ることができる。
2010年4月24日~6月30日、9月1日~11月7日の期間では、平城宮跡ガイドツアーが実施される。ボランティアガイドとともに平城宮跡の建物を周りながら、1300年前の平城京を建設した人々の情熱、姿や都に暮らした人々の衣食住について学ぶことが出来る。日本語のほかに英語、中国語、韓国語でのツアーも、期間中毎日実施される予定。費用は無料。実施時間等の詳細については、ウェブサイトを参照のこと。

平城宮跡の歴史文化については、会場内で貸し出されるiPod touchを用いたセルフガイドシステムでも学ぶことが出来る。システムは日本語、英語、中国語、韓国語、フランス語に対応しており、外国人観光客はパスポート提示により無料で借りることが可能だ。
http://www.1300.jp/


斑鳩

世界遺産「法隆寺地域の仏教建造物」のある斑鳩は、奈良市の南西に位置する盆地状のエリア。のどかな田園風景の中に美しい堂塔が点在する聖徳太子ゆかりの地だ。近鉄奈良駅からはバスで50分程度。JR奈良駅から電車で11分の法隆寺駅からは徒歩15分ほど。

このエリア最大の見所は、法隆寺。7世紀初頭に聖徳太子と推古天皇により創建された寺で、現在の建物は8世紀初めに再建されたもの。世界最古の木造建築物として日本で初めて世界遺産に登録された。
法隆寺の本尊が安置されている金堂には、日本最古の四天王像など多くの仏像が並ぶ。金銅の横に立つ五重塔は、日本に現存する最古の五重塔。上へ行くほどゆるやかに小さくなる屋根は、優美な印象。美術や建築面からも高く評価されている。大宝蔵院・百済観音堂には、法隆寺の寺宝の大半が収蔵されている。すらりとした百済観音は、均整のとれた美しさで広く知られている。

周囲には中宮寺や法輪時、法起寺といった見所も多い。時間があれば、ぜひ巡ってみたい。


今井町

江戸時代から受け継がれてきた伝統的な町並みが残る橿原市今井町。漆喰の壁に格子戸の家が軒を連ねる静かな地域だ。古い町並みの雰囲気と意匠を凝らした町屋の見学を楽しみたい。近鉄八木西口駅が散策の中心。

まずは今井まちなみ交流センター「華甍」(はないらか)を目指そう。今井町の歴史を知ることができ、地図も手に入る。今西家住宅は、今井町統治の一翼を担っていた今西家によって江戸時代初期に建てられた住宅。城郭を思わせる構造が特徴。豊田家住宅は、材木商を営んでいた豊田家の住宅。ケヤキの大黒柱、松の梁など、高級な材木がふんだんに使用された豪華な住宅だ。浄土真宗の寺である称念寺は、寺内町である今井町の中心。河合家住宅は、古くより酒造業を営む河合家の住宅。現在も営業を続ける。座敷を2階に配した点などに特徴がある。


飛鳥
田園の中に点在する民家、周囲にはなだらかな山並み。日本の原風景の中に古代遺跡が残る飛鳥エリアは、飛鳥時代(592-694)の100年間、日本の歴史の中心にあった土地だ。近鉄飛鳥駅が散策の始点となる。レンタサイクルを借り、のんびりと見所を巡ってみよう。

駅から自転車で10分ほどの高松塚古墳では、1972年の発掘調査で鮮やかな彩色の壁画が発見された。壁画には、万葉の人々の姿が鮮やかに描かれている。被葬者については諸説がある。隣の壁画館では、石室の復元模型や副葬品のレプリカ、壁画の原寸模写などを見ることができる。
高松塚古墳から自転車で20分ほどのところにある石舞台古墳は、巨石を30数個も積み上げた石室古墳。天井部分の巨石の重さは推定77トンにもなるという。古墳のなかには立って入ることができる。

奈良県立万葉文化館は、日本に現存する最古の和歌集「万葉集」をテーマにした施設。映像や日本画、植物庭園などを見ることができる。


初瀬・室生

県の東部、近鉄長谷寺駅から徒歩約20分で長谷寺に到着する。徳川幕府3代将軍の徳川家光(1604-1651)が再建した舞台造の本堂は国宝。高さ約10mの十一面観音立像を祭る。登廊(のぼりろう)は全長約200mの回廊で、春、両脇に数千株のボタンが大輪の花を咲かせる。桜やアジサイのほか、四季折々の花が咲き、花の名所として有名だ。

室生寺は室生山の山腹に立ち、同じ真言宗の高野山(和歌山県、世界遺産)が女人禁制だったのに対し、女性の参拝を受入れてきたことから女人高野と親しまれてきた。緑の木立に包まれた境内には、国宝の金堂、本堂、五重塔などが立つ。春には淡いピンクのシャクナゲが見事だ。


吉野

県のほぼ中央に位置する吉野。桜の名所としても有名で、下千本から奥千本へと時期をずらして、ほぼ1ヶ月にわたって桜を楽しむことができる。新緑や紅葉の時期も美しい。
世界遺産である吉野山は修験道(しゅげんどう)の根本霊場として発展してきた。修験道とは、神仏がいる山中で修業を積む山伏の宗教。豪壮な蔵王堂がそびえる金峯山寺(きんぶせんじ)は吉野山のシンボル。本堂の蔵王堂は木造建築物では東大寺大仏殿に次ぐ大きさ。毎朝夕の勤行は誰でも参加可。1336年、幽閉されていた京から逃れた後醍醐天皇が南朝を開いたのが吉水(よしみず)神社。1594年、戦国武将、豊臣秀吉も、ここを本陣に総勢5千人の豪華な花見を開催した。如意輪寺(にょいりんじ)は後醍醐天皇が厚く信仰した寺で裏山に後醍醐天皇陵がある。寺院・竹林院は、庭園が見事な宿坊竹林院群芳園で知られる。吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)は上千本にある古社である。
吉野の名産は葛。葛きりの店もあり立ち寄るのも良いだろう。柿の葉ずしは、サバ、サケの切り身をすし飯にのせ、柿の葉で包んだ押し寿司だ。
吉野へは大阪阿倍野橋から近鉄特急で約75分。

古代日本の中心であった奈良。歴史と伝統文化を感じる散策をしてみてはどうだろう。