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鳥取・島根 (ATT.JAPAN ISSUE 41)

Travel

UpdateFebruary 26, 2018
ReleaseFebruary 21, 2018

砂丘、温泉、名山、城、神社、世界遺産。本州西部の日本海側にはなんと多くの日本の原風景が残されていることだろうか。

水の都:島根県松江

山陰随一の都市。西は宍道湖に面し東は中海に面する。宍道湖と中海を結ぶ大橋川、松江城を囲むようにめぐらされた堀川など、水に囲まれ、水の都と呼ばれる。かつての城下町の風情、和菓子や茶の湯文化が体感できる。

水の都

宍道湖は水の都のシンボル。周囲45kmの、全国で7番目の大きさ。真水と海水の混じった汽水湖で、魚介も豊か。刻々と湖面が染まりゆく夕景が素晴らしい。宍道湖観光遊覧船からや、湖畔の島根県立美術館のロビーからなど楽しめる。 

松江城と城下町

松江城は1611年に築城され、天守閣は山陰地方に唯一現存する天守閣。城の北堀沿いにある塩見縄手は、江戸時代には中級武士が住み、かつての城下町の面影をとどめる。塩見氏が住んだ武家屋敷は、260年ほど前の姿をとどめる貴重なもの。刀箪笥など当時の家具調度品や生活用具を展示。簡素で、質実剛健な武士の気風がしのばれる。

ぐるっと松江堀川めぐり

松江城を取り囲む約3.7kmの堀川を50分かけて巡る遊覧船。城の堀を回る遊覧船は珍しい。16の橋をくぐっていくが、そのうちの4橋は橋板がぐっと下がっていて、船頭さんの合図で、日差しよけの屋根がスルスルと下がり、船客はいっせいに腰をかがめ頭を低くする。近代的なビル群、町家の趣向を凝らした裏庭、松江城の天守閣など周辺の光景が変化に富み、面白い。冬季は炬燵船になる。

茶の湯文化

松江は、京都、金沢と並ぶ三大和菓子処。和菓子やお茶の老舗が点在する。7代藩主松平治郷(不昧公、1751-1818)は17歳で藩主となり、治水や公費の節約、商業の発展などに尽くして藩の財政を立て直した。茶の湯を愛好し、独自の不昧流を確立。数々の茶室、茶道具などの美術工芸品や銘菓の誕生・育成を促し、松江に茶の湯文化を築いた。

小泉八雲

松江を愛した英文学者、小泉八雲ことラフカディオ・ハーン。1850年、ギリシアに生まれ、1890年に40歳で来日。英語教師として松江に赴任。松江の風物や人情に見せられ、「知られぬ日本の面影」などに記した。武家の娘、小泉セツと結婚した。1年3ヶ月間、松江に滞在。「怪談」、「心」など日本に関する英文の随筆・物語を発表した。

妖怪のいる日本の原風景: 鳥取県境港

日本の有名な漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の漫画家、水木しげるは、鳥取県境港の出身。美しい自然が残り、1960年代を思わせるひなびた商店街に、鬼太郎やねずみ男などの妖怪のブロンズ像が立ち並ぶ。

妖怪

神秘的・超自然的な存在をひっくるめて妖怪と呼ぶ。水木さんの定義によれば、妖怪は幽霊とは違い、もともと自然界に生きる生き物で、人間への恨みやねたみのある幽霊とは違うそうだ。妖怪は、自然が残るところでないと行き続けられない。現代人は、妖怪感度が弱くなっている。闇が多かったり、自然を身近に感じていると、人は敏感になり、みえないものを感じる力が研ぎ澄まされ、妖怪感度が上がる。境港には、あらゆる妖怪が住んでいるという。

鬼太郎列車

境港へは、米子からJRで行くのがよい。運がよければ、鬼太郎列車かねずみ男列車に乗れる。0番乗場から出発。片道40分。全16駅は妖怪の駅名もついている。始点の米子駅はねずみ男駅、終着の境港駅は鬼太郎駅。車体には、外側、車内、いたるところに妖怪が描かれている。境港・鬼太郎駅に到着。駅前には、執筆中の水木さんを鬼太郎たちが見守る大きなブロンズ像。ねずみ男、目玉おやじもいる。高い建物がひとつもない。空が広い。

水木しげるロード

水木しげるロードを歩き始めると、最初にあるのが妖怪広場。800mほどのロードには約100体の妖怪のブロンズ像が並ぶ。人気は、なんといってもねずみ男だろうか。2004年には、1体100万円でスポンサーを公募した。妖怪名と寄贈者名の入ったプレートがついている。妖怪神社でおみくじを買うと、妖怪がおみくじを運んでくる。妖怪ショップゲゲゲ。本職は電気工事だが、棚にずらりと並んだ、怪しく精巧な妖怪たちはすべて、店主の手作り。妖怪まんじゅう(妖怪人形焼)は、境港のこぼれ話的情報を盛り込んだ妖怪新聞で包まれている。町のところどころに、妖怪ポストが立っているのに気づくだろう。投函すると、キャラクターの消印を押してもらえる。水木しげる記念館には、東京・調布市にある水木さんの仕事場が再現され、妖怪たちが勢ぞろいしている。

妖怪が町を救った

鳥取県は全国でもっとも人口の少ない県。境港は、その鳥取県の一番小さな市。江戸時代には北前船の寄港地として千石船でにぎわい、明治時代からは日本海航路の重要拠点港として、朝鮮半島各地をはじめ、中国、ロシアなどとの外国貿易の拠点となった。1980年代頃から、駅前商店街はさびれ始めたが、その町を救ったのが妖怪たちだった。

世界にたった一つの、怪しく懐かしい町

水木しげるロードにたったときに感じる、安息感や幸福感。ベンチに座り、潮風に吹かれ、お日様の光を浴びて、青空を見上げ、しなければいけないことを忘れ、ただのんびり、この町にいることを味わいたくなる。いくら観光客が来ても普通の観光地にはならない、普段着の町。人々の日常に、妖怪が無理なく自然に溶け込む。妖怪の世界と人の世界の両方を呼吸することできる、世界にたった一つの、怪しい町。

足立美術館: 島根県安来市

日本庭園と近代日本画を鑑賞できる美術館。なぜこれほど多くの横山大観の作品があるのか。なぜ、このような田舎にこれほど見事な庭園があるのか。多くの人がそんな疑問を抱きながら、この美術館を訪れることだろう。しかし、実際訪れてみると、そのような疑問は、もうどうでもよくなる。素晴らしいコレクションと美しい庭の前には、「なぜ」という問いは不要なのだ。

庭園も一幅の絵

美術館に足を踏み入れると、眼前に日本庭園が広がり、この美術館が、コレクションだけではなく、庭園をも楽しむ美術館だと実感する。苔庭、枯山水の庭、白砂青松の庭、池庭、等々、恵まれた自然を借景に、50,000坪の敷地に6つの庭園。床の間の壁をくりぬき、あたかも一枚の掛け軸の絵画として庭園が鑑賞できる茶室もある。白砂青松の庭は横山大観の名作「白砂青松」を忠実に再現した庭で、白砂と松のコントラストが印象的。秋には絢爛と色づいた紅葉の情景を水面が鏡のように映し、冬の雪積もる枯山水庭は、横山大観の水墨画を彷彿とさせ、四季おりおりの表情が美しい。奥に見える亀鶴の滝は、高さ15メートルの人工の滝。勢いよく流れ落ちる水の躍動感が、雄大な景色にアクセントを加えている。喫茶室「大観」から、お茶を飲みながら心ゆくまで庭が楽しむのもいいだろう。この日本庭園は米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」(JOJG)の選ぶ「2007年日本庭園ランキング」で、5年連続で「庭園日本一」に選ばれた。2位は京都の桂離宮。

横山大観コレクション

足立美術館は、郷土出身の足立全康(あだちぜんこう、1899-1990年)により、1970年に創設された。足立全康は若い頃より商売はじめ、裸一貫から紆余曲折を経て、様々の事業を興した。事業のかたわら、幼少の頃より興味をもっていた日本画を収集。なかでも近代日本画史に不滅の足跡を刻む巨匠横山大観(1868-1958)に心酔するようになった。足立美術館は、近代日本画壇の巨匠たちの作品1300点ほどを収蔵するが、なかでも130点を数える横山大観のコレクションは質、数ともに日本一を有する。

みどころ

鳥取・鳥取砂丘
観光スポットのメインは鳥取砂丘。日本海に面して東西16km、南北2kmにわたって続く海岸砂丘。風が描く風紋など、自然の芸術だ。ラクダに乗って異国気分を味わうこともできる。

三朝温泉・倉吉

800年以上の歴史を持ち、山陰を代表する温泉地、三朝温泉。白狼伝説が、その起源を伝える。源義朝の家来が主家再興の祈願のために三徳山を訪れた際、一匹の白狼とであったが殺生せずに見送った。実はその白狼は妙見菩薩の使いで、その夜、夢枕に妙見菩薩が現れ、助けられたお礼に秘湯を教えたという。ラジウム含有量世界一を誇る。肌触りのいい透き通った湯は飲料にも適し、胃腸病に効果がある。

近隣には三仏寺、滝、奇岩、新緑と紅葉が美しい小鹿渓など、観光スポットも多い。三徳山三仏寺は、平安時代から山岳仏教の霊場として信仰されてきた。470mの断崖にはりつくように立つ国宝の投入堂(なげいれどう)は、いまだに建築方法が不明。

倉吉は、鳥取県の中央部に位置し、中核都市として発展。玉川沿いの白壁土蔵群や商家の町並みが見どころ。山のふもとに舞い降りた天女が、農夫に羽衣を隠されて仕方なく農夫と結婚し、子どもを産むが、ある日羽衣を発見して再び天に昇っていくという天女伝説も残る。

米子・皆生温泉

米子は、1610年に米子城が築かれ、以後、海陸交通の要衝となり、山陰の商都として発展した。米子市街地から約5kmにある山陰随一の温泉地として名高い皆生温泉は1900年に地元の漁師によって発見された。白い砂浜と松林が続く美しい弓ヶ浜海岸は、1981年に日本で最初にトライアスロンの競技が行われた場所でもある。

蒜山・大山

のびやかに広がる蒜山高原。ピクニック、キャンプ、サイクリング、乗馬、スキー、森林浴、キノコ狩などさまざまなアウトドアが楽しめる。大根や、牛乳、アイスクリーム、チーズなどおいしい特産品も多い。大山(1709m)は、中国地方最高峰で、日本百名山のひとつ。古来より神聖な山としてあがめられてきた。大山町にある大山寺は1300年ほど前から山岳信仰の修験場として栄えた。

出雲大社

神話のふるさと、出雲地方には数多くの古代遺跡や古社が残っている。出雲大社は、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をおまつりする。現在の、高さ24mの本殿は1744年に作られたが、かつての本殿はそれよりもはるかに高かったといわれる。神楽殿には長さ13m、重さ5tの巨大な注連縄がかかる。
旧JR大社駅は、1990年のJR大社線廃止により廃駅となった。貴重な文化財として当時のまま保存されている。建物は1924年改築。

石見

石見は、銀山を中心に栄えた。石見銀山の歴史は、14世紀初頭にさかのぼる。一時は採取しすぎて世に見捨てられる時期もあったが、博多商人の神谷寿禎が鉱脈を再発見。江戸時代になって幕府天領となり、世界有数の銀山として繁栄。1943年に閉山。***年、世界遺産に登録された。
大森は、銀山の谷間に広がり、銀山で賑わった町。全長1km。石見銀山資料館は幕府の代官所跡に立ち、工程模型や鉱山道具なども展示されている。
江戸末期には570近くもあった坑道だが、現在は龍源寺間歩だけが唯一公開されている。全長600m。

ズワイガニ
日本海一帯で水揚げされるズワイガニは、冬の味覚の王様。山陰では松葉ガニと呼ばれる。11月初旬頃から3月いっぱいまで楽しむことができる。

みずみずしい果汁の多さとさわやかな口あたりが特色の二十世紀梨。全国生産量の約半分は鳥取県産。

宍道湖は魚介が豊富。なかでも、シラウオ、シジミ、ウナギ、モロゲエビ、スズキ、ワカサギ、鯉は、宍道湖七珍といわれている。それぞれの持ち味を生かした名物料理は、予約により松江市内の食事処や旅館で味わえる。

江戸時代に信州松本から転封された松平直正公が松江にそば職人を連れてきたのが始まりといわれている出雲そば。そばの実を殻ごと砕き、色が黒く、香り高く、コシが強い。