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自動販売機

Culture

UpdateFebruary 21, 2018
ReleaseFebruary 21, 2018

日本を訪れた旅行者が興味を抱くモノのひとつが、街中に数多く見られる自動販売機であろう。場所によっては数台の自販機が連なり、多種多様なモノが販売されている。「24時間、必要な時に必要なモノをすぐ入手できて便利」と評価される一方で、「年齢を問わず誰もが商品を購入することができること」や「常に電力を消費しているため、エネルギーの無駄使い」と批判されることも多い。
今回は、この自販機を紹介したい。

自販機の誕生と日本での普及

世界で最初の自販機は、エジプトのアレキサンドリアの科学者であるヘロンが「気体装置」という書物で紹介した「聖水自販機」だと言われている。てこの原理を利用し、硬貨を入れるとその重みで栓が開き一定時間水が出てくるという仕組みで、紀元前215年頃にアレキサンドリアの寺院に置かれていたようだ。
日本で初めて作られた自販機は、1888年に馬関(現在の山口県下関市)の指物師で発明家の俵屋高七が考案して特許を取ったたばこなどを販売する自販機。現存する日本最古の自販機は、同じく俵屋高七が製作した「自働郵便切手葉書売下機」で、外枠が木製で装飾が施され、切手と葉書を売るだけでなく、ポストもかねる三位一体のユニークなものであった。からくり人形の原理を使ったもので、つり銭装置や売価表示も出る精巧な作りとなっていた。

日本で自販機の本格的な普及が始まったのは、1950年代後半のこと。機械の上にジュースの噴水が付いた「噴水型ジュース自販機」が先駈けであった。噴水のパフォーマンスとジュース1杯10円という安さで空前の大ヒットとなった。その後、自販機管理運営業者の登場、飲料自販機におけるビール系飲料メーカーの参入などにより、自販機は急速に普及し、1964年には24万台であったものが、1970年には100万台に達し、さらにその3年後の1973年には200万台を超えた。1984年には500万台の大台に乗り、その後は緩やかに増えている。

日本で自販機が高普及した理由

2008年末現在、日本における自販機の普及台数は526万台あまり。なぜ、日本で自販機が世界に類を見ない高普及を遂げたのであろうか。

諸外国では治安上の問題から自販機の設置はオフィスや工場、学校などの屋内に限られ、特定のユーザーを対象とするものであった。
一方、日本では治安がよく、自販機を屋外に設置することができた。そのため多くの設置場所に置け、不特定多数を対象とすることが可能となり、利用者が拡大した。

1967年、100円硬貨が改鋳され、材質が銀からより安価な白銅に変更された。そのおかげで約8億枚だった流通枚数は、2年後には約16億枚となり、現在では100億枚を超えている。100円硬貨の大量流通が自販機を使いやすくし、利用頻度を大きく向上させた。

1970年代に入ると、大手飲料メーカーが缶入りのコーヒーを開発し、ホット用とコールド用の切り替えができる自販機で販売を始めた。1台の機械で同時に温かい飲料と冷たい飲料を販売できる自販機が登場し、春や夏には冷たい飲料のみを販売し、秋から冬にかけては冷たいジュースと暖かい飲料を同時に販売できるようになった。

ロボットに対し親近感を抱く日本人気質も、普及の背景にあるだろう。自販機は、人間の仕事を代行する装置であり、ロボットの一種とみなすこともできる。鉄腕アトムやドラえもんなどに代表されるよう、日本人はロボットに対する捉え方がポジティブであり、ロボットから商品やサービスを購入することに抵抗のある人は少ない。

人気を集めるおもしろ自販機

「くじ付きの飲料自販機」というのがある。飲料を購入したあとにルーレットが回り、当たるとさらに一本購入できるというものである。くじ付きの自販機とそうでない自販機が並んでいると、販売されている商品の魅力に関係なく、ついついくじ付きを選んでしまうのである。

その場所でしか購入できない商品を扱う「ご当地自販機」も人気だ。有名なのは東京・秋葉原にある「おでん缶」や「ラーメン缶」自販機。1990年代末ごろから「秋葉原の知られざる名物」として多くのマスコミに取り上げられ、有名になった。

主に高速道路のサービスエリアに置かれている「お笑いサービス付き飲料自販機」。お金を入れてたとえばコーヒーのボタンをしてから、機械の中で豆を挽きドリップをして紙コップで入れてくれる。数十秒の待ち時間の間、自販機の液晶画面にコメディアンの一発ギャグや短いネタが映し出され楽しませてもらえる。

話題作を販売する「文庫本自販機」や、急な雨時に便利な「かさ自販機」など、駅にも人気の自販機がたくさんある。「名刺作成機」は、ビジネスシーンで名刺を重用する日本らしい自販機であろう。



自販機に対する批判

便利な自販機であるが、逆に誰もが買える点が問題にもなっている。例えば、タバコの自販機は2008年以降、ICカード方式の成人識別システムを搭載したものが主流となってきたが、それまでは、年齢認証無しに誰もがたばこを購入することができた。また、アルコール飲料の屋外自動販売機は、業界の自主規制とともに免許証や磁気カードによる年齢認証システムも整備されつつあるが、法制化されていないため、街中には未成年者対策が施されていない自販機も残っているのが現状だ。

自販機の電力消費に対する批判も多い。特に、24時間常に冷たい&暖かい飲み物を用意する飲料自販機には、批判の声が強いという。自販機業界では、もうすぐ売れていく商品だけを部分的に冷やす「ゾーンクーリング」、「照明の自動点滅・減光」等、様々な対策を施し、2005年には、缶飲料自販機一台あたりの年間消費電力量を1990年に比べ約半分にすることに成功したそうだ。

広がる自動販売機の役割

街角に多く普及している自販機。常時電力が供給され、近年ブロードバンド回線や無線技術によりネットワーク化もされつつある。液晶画面を備える自販機も多くなり、新たな役割を持ち始めた。

ひとつは、災害時や緊急時に役立つ役割だ。フリーベンドという、災害時等に自販機内の飲料を無償で提供できる機能は、2004年10月の新潟県中越地震で実際に稼動し、被災者に飲料を供した。街角の多くの自販機には、住所表示ステッカーが貼られている。緊急連絡が必要な際、その場の住所が分かるというのは大変重要なことである。AED(Automated External Defibrillator)を備える自販機や、避難 場所への誘導などの情報提供を液晶画面で行ってくれる自販機もある。

液晶画面を通じて、バスの遅延情報や地域の祭りに関する情報提供、商店街のセール情報提供を行うなど、「町の案内板・掲示板」としての機能も期待されている。

大阪では、2004年より子供の登下校見守り、街角見守りロボットの実証実験が開始されている。自販機にカメラを設置し児童の安全を見守るという機能に加え、子供たちが所持するICタグと無線通信を行い、位置情報の検知や不審者の監視、緊急時の通報などを行うというものである。実用化に向け実験は続いているが、防犯カメラ映像とプライバシー保護の問題、コストを誰が負担するかといった点が課題だそうだ。

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都心の駅ではビジネスマン向けの自販機、農村では野菜や卵販売の自販機、精米機といったものを見つけることができる。日本で、様々な自動販売機を体験し、ぜひ、未来の自販機の姿を想像してほしい。