港町・神戸。
何度も訪れてきたこの街を、私はずっとそういう場所だと思っていました。
三宮や元町、異人館。海を望む風景。それらはたしかに神戸の魅力です。けれど今回、六甲山の向こう側へも足を伸ばしてみて、神戸の見え方が、少し変わりました。
神戸には、もう一つの顔があります。
山と海に囲まれた都市、神戸
港町・神戸。
何度も訪れてきたこの街を、私はずっとそういう場所だと思っていました。
三宮や元町、異人館。海を望む風景。それらはたしかに神戸の魅力です。けれど今回、六甲山の向こう側へも足を伸ばしてみて、神戸の見え方が、少し変わりました。
神戸には、もう一つの顔があります。
山と海に囲まれた都市、神戸
3月の神戸は、明るい光に包まれていました。気温はまだ10℃を下回りますが、日差しには確かな春の気配がありました。
新神戸駅から車で出発し、海とは反対方向へ進みます。長いトンネルに入ったとき、ふと気づきました。「これは六甲山の下を通っているのでは?」これまで何度も神戸を訪れてきましたが、六甲山はいつも「海を見下ろす山」でした。その向こう側にどんな風景が広がっているのか、考えたことがなかったのです。
トンネルを抜けた瞬間、景色が一変しました。かやぶき屋根の民家が点在し、山に囲まれた静かな里山の風景が広がります。新神戸駅からわずか30分とは思えないほど、ひんやりと澄んだ空気を感じました。
訪れたのは、神戸市北区にある棚田。斜面に沿って段々と広がる水田は、いわゆる“観光地の景色”とは少し違います。整えられすぎていない、里山の風景です。ここでは、耕作放棄地を引き継いだ団体が米作りを続けています。田んぼや水辺を維持することで、生き物のすみかも守られています。
都市のすぐそばに、こうした風景が残っていることに驚きました。神戸は港町であると同時に、山の向こうに、もう一つの時間が流れている場所でした。

棚田の生態系を守る人々
棚田の生き物について説明してくださる地元NPOスタッフ「里地・里山の保全推進協議会/兵庫・水辺ネットワークの大嶋 範行さん
神戸といえば、神戸ビーフ、というイメージが強いかもしれません。けれど、今回訪れてみて、野菜の存在感も大きいことに気づきました。
六甲山の北側には農地が広がり、神戸のレストランには地元で採れた野菜が日常的に使われています。「こうべ旬菜」と呼ばれるブランドもあり、市内で育てられた野菜がそのまま市内で消費される仕組みが整っています。
想像していた“港町の食”とは、少し違う大地の恵みが感じられました。
神戸市西区でキャベツを育てる農家
都市のすぐそばで育つ神戸の野菜
神戸市西区の田園地帯にある「C-farm café」は、地元食材を味わえる人気のカフェです。2022年にオープンしたこの店では、有機野菜をふんだんに使った料理を提供しています。
窓の外には、のどかな田園風景が広がります。このカフェを運営するC-farmを立ち上げたのは、若手農家のクリスさん。かつてプロ野球選手として活動していましたが、2019年に引退し農業の道へ進みました。「食」を入り口に農業に興味を持ってもらいたい。そんな思いから、畑の隣にカフェを作りました。
田園風景の中で味わう、神戸の野菜
月替わりのランチプレートには、神戸産の食材が使われています。敷地内では農業体験もでき、ヤギも3匹飼われています。公共交通機関で行くには、実は少し不便な場所。けれど、ランチタイムには途切れることなくお客さんが訪れていました。神戸野菜の魅力を、実感できる場所でした。
地元の野菜を味わう一皿
1995年1月17日、阪神・淡路大震災が神戸を襲いました。長田区では大規模な火災が発生し、多くの住宅や店舗が焼失しました。かつてケミカルシューズ産業で栄えたこの下町は、大きな被害を受け、街の風景は大きく変わりました。その後、約30年にわたる再開発を経て、街は新しい姿へと生まれ変わりました。
震災後、この地域では空き家や空き店舗が増えました。しかし近年、それらを活用した新しいプロジェクトが次々と生まれています。古い建物をリノベーションし、カフェやアトリエ、コミュニティスペースとして再生する取り組みです。
震災を乗り越えて続く市場
アーティストやクリエイターが移り住み、下町の空気と新しい文化が混ざり合う街へと変化しています。その象徴のひとつが、1922年に創立し100年以上続く丸五市場です。昔ながらの市場が残るこの場所は、地域の人々の生活を支えるとともに、新しい挑戦の舞台にもなっています。
市場の中にあるのが、元魚屋の店舗を改装したカフェ「丸五Spice Up」。店内には、創立当時の壁や魚屋時代の床がそのまま残されています。そこに現代的なデザインが加わり、時代が重なり合う独特の空間が生まれました。
古い市場に生まれた新しいカフェ。代表の首藤義敬さん
この店では、スタッフの中に医療・介護職の経験者や障害のある人もいます。車いすでも働きやすいよう厨房を広く設計するなど、多様な人が働ける場づくりにも取り組んでいます。
店のテーマは「スパイス」。クミンシードなどを使った料理やカレーが楽しめます。また、市場の他店で買った料理にスパイスを加えて提供する「フルコース」のイベントも行われています。
神戸らしいスパイス文化
スパイス文化は、世界とつながってきた港町・神戸らしい発想です。地元の人も観光客も、高齢者も若者も、さまざまな人が自然に集まります。通りから小さな入口に入り、狭い通路を歩いていくとあらわれる、ちょっとカオスな空間。震災を経験した下町の市場は、今、新しい文化とコミュニティが生まれる場所になっています。
港町・神戸のイメージが大きく変わった、今回の旅でした。六甲山の向こうには里山や里田の風景があり、都市のすぐそばで農業が続き、下町では新しい文化が生まれています。観光地としての神戸の外側に、もう一つの層があります。その重なりに触れることで、この街の見え方は、少し変わるかもしれません。
東京 → 新幹線で約2時間40分 → 新神戸駅
大阪 → 電車で約30分 → 三宮
関西国際空港 → 電車で約1〜1.5時間 → 三宮
神戸市環境局自然環境課 0570-083-330または078-333-3330
神戸市経済観光局農水産課 0570-083-330または078-333-3330
住所 兵庫県神戸市西区平野町印路26-1
電話 078-995-8859
営業時間 11:00-17:00(L.O16:30)
定休日 月曜
公式サイト https://c-farm.jp/
Instagram https://www.instagram.com/cfarm.jp/
住所 神戸市長田区二葉町3-11-2(丸五市場内「そば焼 いりちゃん」向かい)
電話 078-646-2088
営業時間 予約制 ランチ 11:30-15:00(L.O14:00)
定休日 不定休 おおむね週3回営業
Instagram https://www.instagram.com/marugo_spice_up/