日本の公衆浴場「銭湯」に行ってみよう!第二弾
Release
15 December 2025
Update 17 December 2025

┃銭湯のウェルネス効果 健康と美容のために
日本人にとって入浴は、身体を清潔にするだけでなく、日々の健康を支える大切な習慣であり、疲れを癒し、自分自身と向き合うための儀式です。
シャワーが主流の欧米に対し、日本では今でも「湯船に浸かる文化」が根強く残っています。
自宅に浴槽がある人が増えている現代でも、銭湯を愛する人々は、週に一度、あるいは毎日近所の銭湯に通います。彼らにとって入浴とは、単なる「洗う行為」ではなく、全身の健康と美容を保つための大切なケアなのです。
では、なぜ自宅の風呂より銭湯を選ぶ人がいるのでしょうか?
その理由のひとつが「空間」にあります。広くて深い浴槽に全身を沈めることで、より効率的に身体を温めることができます。自宅の狭いバスタブでは難しい、しっかりとした温熱効果、ストレッチ、身体の可動域を活かした動きが可能になります。その結果、リラックス効果が長く持続し、自律神経が整い、身体が深く回復すると言われています。

もうひとつの重要な要素は「水質」です。通常の水道水を使う銭湯もありますが、多くは地中深くから汲み上げた天然ミネラルを豊富に含む水を使用しています。さらに、ジェットバス、薬湯、炭酸泉などの特殊な浴槽があり、その体験はより効果的かつ贅沢なセラピーとなります。これらは血行促進、筋肉疲労の回復、肌の健康、快眠などに効果があるとされています。
そして、身体だけでなく「心」にも恩恵があります。
東京都市大学の温泉療法研究の第一人者・早坂信哉教授によれば、入浴には幸福感を高める効果があることが実証されています。特に、湯に浮かぶ感覚は、深い安堵感をもたらします。
私自身、銭湯は「心のデトックス」の場だと感じています。スマートフォンや画面から離れることが難しい現代において、銭湯の中ではそれらは禁止。時おりサウナに設置されたテレビを除けば、湯音、会話、湯気の中に身を置く静寂な空間が広がっています。思考がゆっくりとほどけていく、そんな瞑想的なひとときです。
2008年に日本に移住してから、日常的な入浴がいかに心と身体を癒すかを実感しました。仕事で疲れ切った日、熱いお湯に浸かると、不安や緊張が湯気とともに消えていくような感覚がありました。銭湯を出たあとには、ストレスが軽くなり、まるで別人のような気分でした。
ある銭湯のご主人も次のように語ってくれました。
銭湯の番台で4年間働く中で、そうした変化を毎日のように目にしています。緊張した面持ちで来た人たちが、湯上がりにはほっとした表情で「ありがとう、いいお湯でした」と言って帰っていく。その一言が、銭湯を続ける大きな力になっています。


銭湯には美容やアンチエイジングの可能性も秘められています。
日本では近年、「ホルミシス効果」に注目が集まっています。これは軽いストレス刺激が体に良い反応を促すという概念です。銭湯の高温浴(41~42℃)による短時間の熱ストレスは、ヒートショックプロテイン(HSP)の生成を促すとされており、細胞の修復や老化予防に役立つ可能性があるという研究が進められています。
まだ研究段階ではあるものの、HSPが活性化されると老化の抑制に繋がるという見解もあります。実際に、浴場で出会う高齢の女性たちは、実年齢よりずっと若く見える方が多く、銭湯の効果を感じずにはいられません。
HSPの効果を最大化するには、約10分間しっかり浸かり、その後は冷水風呂には入らず、ゆっくり休むのが理想です。軽く汗をかくのも有効ですが、無理せず体調に合わせて水分補給を忘れずに。
また、入浴後の肌は水分を吸収しやすい状態です。保湿クリームや乳液などでケアをすることで、潤いをしっかり閉じ込めることができます。
銭湯での時間を“プチ・スパ”のように使うのもおすすめです。私はよくフェイスパックやスクラブを持参し、湯上がりにセルフマッサージや軽いストレッチをしています。温まり、ほぐれた体は、より効果的にケアを受け取ってくれます。
江戸時代の人々もまた、銭湯を「清潔になるため」だけでなく、「爽やかに、そして優雅に整える場」として楽しんでいました。私も同じです。
大事な打ち合わせやイベントの前には、必ず銭湯に立ち寄ります。気持ちが落ち着き、肌には自然な艶が出て、自信も湧いてくるのです。

あづま湯(埼玉県朝霞市)
あづま湯は、朝霞駅から徒歩数分の静かな住宅街に佇む、地域に愛される銭湯です。1964年創業の老舗で、昭和レトロな雰囲気と現代的な工夫が融合した空間は、老若男女問わず多くの人々が心と身体を整えに訪れます。
館内は明るく開放感があり、熱帯魚やイルカのタイルアートがとても可愛らしく、心が和みます。
浴槽の種類も豊富で、強力なジェットバスで筋肉をほぐしたり、やさしい気泡風呂でリラックスしたり、露天風呂で天然温泉のような雰囲気を味わうこともできます。中でも、毎日異なる薬草を使った香り高い薬湯は、血行の巡りをサポートしたり、肌の調子を整えると言われています。
ドライサウナと冷水風呂も完備されており、「温冷交代浴」で代謝アップや免疫力向上を目指す人にも最適。常連客の中には、柔軟性の維持や睡眠の質向上、エネルギー補給の一環として日常的に通う方も少なくありません。



料金:550円
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住所 |
埼玉県朝霞市根岸台6-2-35 |
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アクセス |
朝霞駅から徒歩2分 |
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営業時間 |
15:00~23:30 |
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定休日 |
金曜日 |
ヌーランドさがみ湯(東京都大田区)
大田区にあるヌーランドさがみ湯は、ただの銭湯ではなく、都市型リトリート施設のような癒しの空間。雑色駅から徒歩すぐの便利な立地にあり、複数階にわたる館内には、心と体をゆるめる多彩な設備が整っています。
一番の特徴は、ミネラルをたっぷり含んだ天然の黒湯温泉(くろゆ)。屋内外の露天風呂で楽しむことができ、肌にやさしく、深いリラックス感をもたらします。マッサージ風呂や薬草スチームサウナなどもあり、各所で穏やかな回復を促してくれます。
また、ヌーランドでは入浴にとどまらず、トータルなセルフケアをサポートしています。サウナと水風呂の交代浴で血流と筋肉の回復を促進し、ラウンジや屋上庭園で静かに休息を取ることができます。ボディケア、レストラン、カラオケまで完備され、ゆったりと午後を過ごせる施設です。






料金:550円
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住所 |
東京都大田区仲六郷2-7-5 |
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アクセス |
京急線・雑色駅から徒歩3分 |
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営業時間 |
10:00~23:00 |
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定休日 |
火曜日(浴室のみ利用可) |
亀乃湯(鹿児島県鹿児島市)
鹿児島市の三和町にある亀乃湯は、戦後の素朴な風情を今に伝える、レトロな銭湯です。地元の人々に長く親しまれてきたこの施設では、シンプルながら心のこもった温もりが感じられます。
地下水に薬用の麦飯石を加えた湯は、神経痛を和らげ、血行を促進し、肌をなめらかに整えます。漢方をベースにした薬湯もあり、特に高齢の常連客に人気。
約85℃のコンパクトなサウナと冷水槽が揃っており、代謝や回復力をサポートする温冷浴が楽しめます。
木製ロッカーや昔ながらの番台、そして常連客とのあたたかな交流…。どこか懐かしく、心がほどけるような銭湯体験が待っています。看板猫が出迎えてくれるのも魅力のひとつ。





料金:460円
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住所 |
鹿児島県鹿児島市三和町64-16 |
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アクセス |
「三和中央」バス停徒歩1分、または鴨池フェリー乗り場から徒歩約3分 |
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営業時間 |
14:00~22:30 |
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定休日 |
月曜日 |
御所宝湯(奈良県御所市)
奈良県御所市の静かな街並みにひっそりと佇む宝湯は、代々家族で受け継がれてきた心温まる銭湯。懐かしい風情とともに、素朴で癒しの時間が流れています。
地域の人々がゆったり過ごすこの空間では、入浴後にまんがを読んだり、おしゃべりしたりする姿も日常の風景。浴槽はシンプルながら、小さな露天風呂もあり、心と体を整えるには十分な構成です。
北欧風のサウナは、木とタイルの温もりに包まれた静かな空間。全身のリフレッシュにぴったりです。
特筆すべきは、日本で唯一の現役女性ペンキ絵師・田中みずきさんが描いた壁画。やわらかな山並みの景色が、場全体に安らぎと美しさを添えています。




料金:440円
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住所 |
奈良県御所市御国通り2-361-5 |
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アクセス |
JR和歌山線・御所駅から徒歩約5分 |
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営業時間 |
平日 14:00〜22:00 / 土日祝11:00〜22:00 |
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定休日 |
第2・第4水曜日 |
イーストランド(東京都江戸川区)
江戸川区にあるイーストランドは、北欧のウェルネス文化を取り入れた、広々としたモダンな銭湯。清潔で居心地の良い空間には、さまざまな温度の浴槽や豊富な設備が整っています。
露天エリアにはミネラル豊富な黒湯、ドライサウナや冷水風呂も完備されており、心身のリカバリーに最適。特に注目なのが岩盤浴。温められた天然石の床に横たわることで、やさしい発汗デトックスが体感できます。
青いタイルに囲まれた冷水風呂は静謐な雰囲気で、瞑想するにもぴったり。小さな庭に囲まれた露天風呂では、ちょっとした温泉旅行気分を味わえます。
多様な設備がそろったイーストランドは、深いリラクゼーションと健康効果を求める人々にとって、理想的な癒しの場です。






料金:550円
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住所 |
東京都江戸川区西篠崎2-23-1 |
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アクセス |
都営新宿線・篠崎駅から徒歩約15分 |
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営業時間 |
14:30~23:00 |
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定休日 |
月曜日、第1第3火曜日 |
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日本銭湯文化協会公認の銭湯大使。フランス出身で、日本の銭湯をこよなく愛する。講演会や本の出版、テレビ出演など、世界中に銭湯の魅力を発信している。
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