富士山にまつわる文化を体験! 「富士講(ふじこう)」ツアー体験レポート

はじめに

人々はなぜ富士山に登るのでしょうか。そもそも、なぜ登り始めたのでしょうか。
現在はスポーツ登山として訪れる人も多い富士山ですが、古くから富士山を信仰する風習があり、2013年に「信仰の対象と芸術の源泉」としてユネスコ世界文化遺産に登録されました。
「富士講」はその構成要素の一つで、「富士講」は富士山を神聖な山と考え登拝を通じて心身を清める信仰です。江戸時代(1603-1868)に広まり、全国から多くの団体がこの地を訪れました。現在、その「富士講」文化を追体験できるツアーが富士山周辺で企画されており、今回att.JAPAN編集部のメンバーが参加してきました!
本ツアーは、地元の人でもなかなか体験することのない特別なプログラムが目白押し。今回は富士山の麓に点在する神聖な場所を巡りながら富士講を体験する、1泊2日のプランに参加しました。まるでタイムスリップしたかのような時間でした。

このプランの内容は変更になる可能性があります。
詳しくはこちらのツアー主催者のサイトをご確認ください。
https://fuji-ko-trail.com/

街行く人々が冬の装いへと替わりつつある11月中旬。新宿駅から特急電車に乗り、大月(おおつき)駅まで約1時間。富士山の麓、富士吉田市へ向かいます。天気は快晴。今回は大月駅でツアー主催者と待ち合わせ、車で移動を始めると、少し遠くに雪を被った富士山が綺麗に見えてきました。
富士山の登山シーズンは7月上旬~9月上旬に限られるため、この時期に富士山の麓へ足を運ぶことは珍しいですが、話を聞けば聞くほど面白い。登るだけではない富士山の楽しみ方を、実際に体験しながら感じることができました。

富士講ツアーの流れ



道路に突如現れる大きな「金鳥居」。ここを境に、1㎞ほどにわたって「御師」という神職の家が並びます。


これは「金剛杖」といい、登山道の麓にあるお茶屋「中ノ茶屋」や5合目で手に入れることができます。5合目、6合目…山頂と、到達したところで焼印(やきいん)を入れていくのが楽しみの一つ。今回は「金鳥居」の焼印を、近くの薬局で入れてもらいました。
さらに、白装束(行衣)を羽織ります。神仏の世界である富士山は、あの世と同じ。富士登拝から帰ることは生まれ変わりを意味し、病気が治り、願いが叶うと信じられています。
では、富士講と同じ格好で体験スタート。


まずは「身禄堂」へ。ここで富士講発展に寄与した人物を祀る重要な場所で、礼拝を体験しました。


続いて、吉田胎内樹型に向かって歩きます。出発する際は、先達(リーダー)の「出立(しゅったつ)!」の後に「おう!」と掛け声を。静かな森の中で鳴る金剛杖に付いた鈴の音が、当時の雰囲気をより感じさせます。


15分ほど歩くと、吉田胎内樹型へ到着。ここは937年の富士山の噴火で流出した溶岩と樹木によってできた洞穴。20mほど奥には、富士山の神とされている木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)が祀られています。狭い中を身をかがめながら進み、奥で礼拝をしてから戻ります。厳かで神秘的な体験でした。



次に、数ある登山道のなかで唯一、かつての姿を留めながら麓から山頂まで登ることのできる吉田口登山道を、昔の移動手段である馬に乗って入ります。他の参加者と約15分ごとに交代し、「馬返し」と言われる途中のポイントまで進みます。馬に乗らない間は、後ろを歩きました。


最後に訪れたのは「北口本宮冨士浅間神社」。道路側の鳥居をくぐると、奥まで続く参道が。静かで神秘的なこの道は、歩くと心が落ち着きます。


進むと目の前に現れる、富士山の大鳥居。存在感のある佇まいは圧巻でした。


大きくて厳かな雰囲気が漂う社殿では、祈祷をしていただきました。

御師(おし)の家


市内には御師(おし)と呼ばれる信者の宿を営んだ神職の家が残り、当時の信仰文化を今に伝えています。かつては80~90軒ありましたが、現在、宿泊者を受け入れている家はごくわずか。今回はその貴重な1軒に宿泊しました。



今回宿泊した「御師のいえ 大鴈丸」は400年以上続く御師の家で、建物は登録有形文化財です。
畳や襖を取り換えるなど、現代風にリノベーションしつつ建物自体の構造や柱はそのままなので、伝統的な日本家屋を楽しめます。



広く作られた脱衣所と浴室。


電子レンジやポットなども完備。富士山の天然水も飲めますよ。


宿の中に作られている神殿。夕食の前にはこちらで礼拝を行います。



ウッド調で、柔らかい雰囲気が漂うカフェが併設されています。奥にある薪ストーブは冷えた体を優しく暖めてくれます。訪れた人々の交流の場にもなっているようです。


布団は柔らかく、ベッドのようにしっかりとしているので寝心地が良く、疲れがとれました。


夕食は富士講の信者をもてなすために作られた食事を現代風にアレンジしたもので、日本の家庭料理に近い感覚で食べられます。
御師の家の食事は、はっきりとしたルールがあるわけではありませんが、次の2つの要素が含まれていることがほとんどなようです。
1.山のものと海のものを一緒に食べる
2.四つ足動物を食べない
季節ごとに使う食材やメニューが変わるのも楽しみの一つ。



朝食はカフェスペースで。ツアー参加者は日本式の朝食をいただけます。


そして、今回は特別に「大国屋(だいこくや) 」にて日帰りツアーで体験する食事もいただきました。


こちらでは、「御師の家で食べる日本料理」というコンセプトの食事を楽しめます。
御師の息子さんが猟師ということもあり、ジビエが出ることも。御師の家の食事では四つ足動物は食べないことになっていますが、こちらでは「命を大切にする」という心で振舞われるようです。

特別な体験ができる「富士講」ツアー。新たな富士山の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。

ツアー情報

FUKI-KO

日帰り、1泊2日、2泊3日の3つのツアーが用意されています。
いずれも集合場所は富士急行線富士山駅。
TEL 0555-86-2130


ツアー主催:
一般社団法人マウントフジトレイルクラブ


宿泊した御師の家:
御師のいえ大鴈丸 fugaku x hitsuki

〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田7丁目12-16
TEL 080-1525-9515
https://www.instagram.com/fugakuxhitsuki?igsh=eG50aGEzZmhmdjEy/


日帰りツアーで食事がいただける御師の家 :
大国屋(たいこくや)

〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田5丁目10-25
TEL 080-5198-0491

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このページの情報は 2025年12月の情報です。
ライター
Fumika
体を動かすことが好き。旅行は可能な限り徒歩移動を取り入れるスタイルで、朝のカフェ探しも楽しみの一つ!旅行先の思い出はトラベラーズノートにまとめ、後々見返しては余韻に浸っています。旅マエから旅アトまで、ワクワクするような情報をお届けしていきます!

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