自然と文化が薫るまち・盛岡満喫モデルコース

東京から新幹線で2時間10分。岩手県盛岡市は、岩手山と市街地を流れる川が美しい、静かな城下町です。2023年には、アメリカの有力紙・ニューヨークタイムズが発表する「今年行くべき52カ所」のうちの2位に選出されて話題を呼びました。美しい自然と豊かな文化・歴史が一度に味わえるまちで、市街地の見どころを徒歩で巡ることができるのが大きな魅力です。

■盛岡観光の基礎知識
年間平均気温は10~11度ほどで、東京と比較すると5度ほど低いです。真夏でも朝晩は涼しく感じられます。12月~2月は特に寒く、日中でも氷点下の日も珍しくないので、防寒は万全に!

盛岡観光には徒歩のほか、盛岡駅東口を起点にした循環バス「でんでんむし」がおすすめ。20分間隔で運行しており、運賃はどこから乗っても1回130円。今回紹介するスポットはすべて循環ルートの近くにあるので、歩き疲れたら利用してみて。バスの中央のドアから乗車して、前方ドアから降りるスタイル。支払いは交通系ICカードの場合、乗車時と降車時の2回タッチします。現金の場合は、降車時に現金を運賃箱に入れます。

盛岡在住経験のあるライターが、とっておきのモデルコースをお届けします!

■自然・文化・歴史 よくばりモデルコース

10:00 盛岡駅

新幹線を降りたら東口へ。駅を背にまっすぐ300mほど歩くと、東北地方最大の川・北上川にかかる開運橋へ到着します。天気がよければ、左手には大きく岩手山が見えます! 岩手山は岩手県最高峰(2038m)で、盛岡のシンボル的存在。山頂には例年10月ごろから雪が積もり始めます。4月になって雪解けが進むと、山肌が羽を広げたワシのように見え、古くからこの現象は農作業のスタートの合図とされてきました。

開運橋のたもとの木伏緑地には、おしゃれなカフェやジェラートショップ、地元食材を使ったレストランなどが並んでいます。岩手山がきれいに見える日は、このあたりで一服するのもいいですね。

【コメント】岩手山のビュースポットとしては、個人的に一番のおすすめ!

10:35 盛岡城跡公園

開運橋を渡った先は五差路になっているので、斜め右の菜園通りへ入ります。まっすぐ900mほど進むと、突き当たりが盛岡城跡公園の入り口です。盛岡城は、17世紀前半から19世紀後半にかけて盛岡を拠点とした南部藩の藩主の居城でした。残念ながら天守閣は残っていませんが、立派な石垣は高いところで約14m、建物でいうと地上5階建てに相当する高さで、迫力があります。石垣をのぼった先は公園として整備されており、桜と紅葉の名所としても有名。例年の見ごろの時期は、桜が4月中旬~下旬、紅葉が10月下旬~11月中旬ごろです。盛岡は冷涼な気候のため、東京の平地で見ごろとなる時期とはかなり差があります。特に桜は、関東地方以南よりも長い期間楽しめますよ!

公園内には博物館「もりおか歴史文化館」があり、1階では盛岡を代表する3つの祭り「チャグチャグ馬コ」「盛岡さんさ踊り」「盛岡秋まつり」で使われる衣装や山車などが常設展示されています。2階は時期によって異なる企画展示です。1階の入場は無料で写真もOKなので、祭りの熱気を感じてみて。

もりおか歴史文化館チャグチャグ馬コ盛岡さんさ踊り

【コメント】公園に隣接した櫻山神社にある、おにぎりのような形の大岩「烏帽子岩」も見どころです。

URL https://www.moriokashiroato.jp/

11:30 岩手銀行赤レンガ館

もりおか歴史文化館をさらに東へ進み、中の橋を渡ります。渡ってすぐの場所にあるのが、盛岡のランドマーク「岩手銀行赤レンガ館」。東京駅の駅舎設計で知られる辰野金吾が手掛け1911年にできた建物で、国の重要文化財に指定されています。

岩手銀行赤レンガ館

館内は無料ゾーンと有料ゾーンに分かれており、有料ゾーンにはバーチャルシアターやパネル展示などがあります。クラフト展などのイベントが開催されていることも。

岩手銀行赤レンガ館 内観

【コメント】中の橋がかかるのは、盛岡市の中央を流れる清流・中津川。秋には遡上する鮭が橋の上から見られます!

URL https://www.iwagin-akarengakan.jp/

12:00 そばランチ

このあたりは河南エリアと呼ばれ、古くから商業の中心地として栄えてきました。飲食店も多くある地域です。お昼は盛岡名物・わんこそばにチャレンジしてみませんか?

戸隠そば(長野県)、出雲そば(島根県)と並んで「日本三大そば」と称されるわんこそば。一口大に小分けしたそばを何杯もおかわりして食べるのが特徴です。大勢のお客さんをおもてなしする心から生まれたのだそう。岩手銀行赤レンガ館からすぐの場所にある「そば処 東家」で体験できますよ。

「じゃんじゃん!」「はい、どんどん!」という掛け声とともに、給仕さんが手元のお椀に一口大のそばを入れてくれるので、リズムよく食べていきます。さまざまな薬味があるので、飽きずに食べることができます。お腹いっぱいになったら、手元のお椀の蓋を閉めるのがルール。わんこそば10~15杯が、かけそば1杯分に相当します。100杯以上食べると記念手形が、100杯未満でも証明書がもらえます。盛岡ならではの文化なので、ぜひトライしてみて!予約しておくとスムーズですが、予約なしでもOK。

【コメント】つい食べすぎてしまうため注意。あたたかいそばや丼ものなどの通常メニューも豊富なので、他にも盛岡グルメをたくさん味わいたい人はそちらも◎ 私のおすすめは特製カツ丼です。

盛岡は、中華麺の購入額が日本一になるなど麺好きな人々が多い「麺のまち」です。コシの強い麺と牛骨スープが特徴の盛岡冷麺、平麺に肉味噌をからめながら食べる盛岡じゃじゃ麺は、わんこそばとあわせて「盛岡三大麺」と呼ばれています。

盛岡冷麺なら、発祥の店「食道園 」へ。

盛岡冷麺

盛岡じゃじゃ麺なら「白龍」 がおすすめ!

盛岡じゃじゃ麺

URL https://wankosoba.jp/

13:30 古いまちなみを歩く

河南エリアは北上川と中津川が合流する結節点に近く、古くから水運が発達していました。県内各地へ向かう街道の合流地点でもあったことから、17~19世紀にかけて物流拠点として、そして城下町の入り口として発展しました。「盛岡町屋」と呼ばれる商家が多く建ち並び、風情あるまちなみが現在も残っています。

盛岡町屋

歴史ある町屋を体感できるのが「もりおか町家物語館」です。盛岡の歴史や文化の発信拠点で、建物内部をじっくり見学できます。2006年まで実際に酒造りが行われていた蔵をリノベーションした施設で、白壁が美しい蔵のほか、建物の間の路地スペースなどでもレトロな雰囲気を味わえます。盛岡の特産品などを販売するショップやカフェもあります。

もりおか町家物語館

豊富な湧き水があることもこのエリアの特徴です。水道が普及した現在でも、湧き水が地域住民の生活用水として使われており、「大慈寺水」「青龍水」という2カ所で水を汲むことができます。天然の地下水で口当たりがやわらかく、とても飲みやすいです。マイボトルなどを持っている人はぜひ味わってみて。水汲み場は階段状のプールのようになっており、上から飲料水、米とぎ水、洗い物、足洗い用と用途が分かれているので、一番上から汲みましょう。

【コメント】汲んだ水をコーヒーや緑茶に使うと、味がまろやかになってもっとおいしい!

大慈寺水

青龍水

この豊かな水を活かしてつくられるのが日本酒です。岩手県では江戸時代(17~19世紀)に酒造技術がもたらされて以降、南部藩の庇護を受けながら酒造りが発展してきました。この地域で活躍する酒造職人は「南部杜氏」と呼ばれ、日本最大の杜氏集団としても知られています。冷涼な気候を活かし、低温で長時間発酵させてつくられる日本酒は、キリッとした香りと後味が特徴です。

気軽に酒造文化を味わえるのが蔵元「あさ開」。無料試飲や、スタッフがその場でお酒を瓶詰めしてくれるサービスがある地酒物産館には、ぜひ立ち寄ってみて。ここで食べられる「大吟醸ソフトクリーム」は、ふわっと鼻に抜けるお酒の香りが癖になります。

予約をすれば、仕込蔵や工場などが見学できる館内ツアーも楽しめます。
https://www.asabiraki-net.jp/

URL https://machiya.iwate-arts.jp/

15:30 盛岡バスセンター周辺でショッピング

「盛岡バスセンター」は盛岡駅と並ぶ交通のハブで、県内や東北各地へ向かう路線バスや高速バスの拠点。2022年秋にリニューアルし、飲食店も入っています。

盛岡バスセンター

ここではぜひ地元民のソウルフード「福田パン」を味わってみましょう。約50種類の中から好みの具材を選び、コッペパンに挟んでもらうスタイル。具材は照り焼きチキンやたまごなどのお惣菜系、あんこやホイップクリームといったスイーツ系もあり、自分の好みにカスタマイズできるのが魅力です。市民にこよなく愛されていて、パンが売り切れて早めに閉店してしまう日もあるほど!

福田パン
福田パン

バスセンターの向かいには、2024年秋にオープンした地上4階建ての複合商業施設「monaka」があります。さまざまな飲食店やショップが入っているので、おやつやお土産を探すのにぴったり。

monakaに隣接して、昔ながらのアーケード街・肴町商店街があります。地元の人たちとの交流を楽しみたいならぜひ訪れてみましょう。アーケードの中ほどで東に折れると、南部鉄器の老舗が数店舗並んでいます。

南部鉄器とは、良質な鉄が多く産出された岩手県で17世紀初頭からつくられ始めた鉄の鋳物のことで、国の伝統的工芸品の一つ。保温性が非常に高いのが特徴で、「鉄瓶」と呼ばれる湯沸かし用のやかんや鍋などが製造されています。ざらっとした素朴な風合いと重厚感、そしてレトロな佇まいが魅力の南部鉄器ですが、何より素晴らしいのは機能性。鉄瓶でお湯を沸かすと、内側の鍋肌が水分中のさまざまな物質を吸着してくれるため、口当たりが優しく、まろやかになるのです。お茶やコーヒーを淹れると、その差は歴然! 使うにつれて、吸着した物質が赤褐色や白っぽく鍋肌に付着していきますが、これにはさび止めとしての機能もあるのだそう。私は盛岡で購入した鉄瓶で毎日お茶を淹れています。少しずつ育てていく感覚もあり、大切な宝物のひとつです。

南部鉄器

「鈴木主善堂」は1616年創業の歴史ある工房。店頭には鉄瓶をはじめ、鍋・フライパン類や小物が並んでいます。堅牢なつくりで一生ものの鉄瓶は、イチオシの盛岡土産。持ち運ぶには重たいので、まちあるきの最後に購入して、帰りは盛岡駅までバスに乗るのがおすすめです。

【コメント】さらに手軽なお土産として、南部鉄器の風鈴もおすすめ。リーンと澄んだ音が長く鳴り響き、とても涼しげです。南部鉄器のお店や、盛岡駅などにあるお土産屋さんでも購入できます。

URL https://morioka-buscenter.jp/

少し足をのばして:南昌荘

盛岡出身の実業家・瀬川安五郎の邸宅で、1885年に建てられた「南昌荘」もぜひ訪れてほしいスポットです。池泉回遊式の庭園は国の登録記念物に、建物は盛岡市の景観重要建造物に指定されており、一般公開されています。

建物が高床式になっていて、通常より高いところにある縁側からは美しい庭園全体を見渡すことができます。磨き込まれた床に四季折々の庭園の木々が映り込み、はっとする美しさ。夏の青もみじと、秋の紅葉の時期が特におすすめです。市内循環バス・でんでんむしのルートからは少し外れますが、一見の価値あり!

南昌荘

南昌荘

南昌荘を訪れたら、徒歩2分の場所にある「旧石井県令邸」にも立ち寄ってみてください。南昌荘と同時期に、岩手県の県令(現在の県知事)石井省一郎の私邸として建てられた、盛岡で最も歴史ある洋館です。蔦の絡まる外観が特徴で、盛岡市の景観重要建造物に指定されています。開館はイベントがあるときのみ。

旧石井県令邸

URL https://www.iwate.coop/kankyou/nanshousou/

まとめ

美しい風土に、独自の歴史と文化が根付くまち・盛岡。新幹線の駅から徒歩圏内に見どころがコンパクトにまとまっていて観光しやすい一方、観光地らしい騒がしさはほぼなく、のんびりと過ごせるのが大きな魅力です。ぜひ訪れてみてくださいね。

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ライター
Remi
おいしいものを見つけて、自宅で再現するのが趣味。合羽橋でキッチン用品を物色しているとあっという間に夕方に…。サッカーも好きなので、外出しない週末はJリーグ中継を流しながら料理します。海外サッカーのイケメン探しは日課です。名古屋出身。 

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