二見の古き伝統の塩づくりを発見しよう

三重県で最も有名な観光スポットの一つである夫婦岩を眺めようと、毎年大勢の人々が二見を訪れます。しかし、二見エリアには、何世紀にもわたって古くから塩づくりを継承してきた神社もあるという事実はあまり知られていません。御塩殿神社のお祭りと魅力的な塩づくりの伝統をご紹介します。

Written by Julien Legrand

二見の古き伝統の塩づくりを発見しよう

二見浦駅から徒歩15分の場所にある御塩殿神社は、伊勢市とその近郊にある、125社の近縁の神社からなる伊勢神宮に属しています。伊勢神宮のおどろくべきことの一つは、すべてが自給自足だということです。 お米、野菜、魚など、お供えや神事に使われる食材はすべて、伊勢周辺の由緒ある地で生産されています。二見の御塩殿神社は、塩の守護神である御塩殿鎮守神(みしおどののまもりのかみ)をまつり、伊勢神宮へ奉納する塩づくりを務めています。塩は日々の神々への食事のお供えとしてだけでなく、浄化の儀式にも使用されるため、この務めは特に重要だといえます。

塩づくりの工程は大きく分けて3段階あります。1つ目は7月下旬から始まり、約1週間かかります。五十鈴川河口付近の御塩浜では、海水と淡水が混ざった汽水が集められます。塩は、海水に少量の淡水を混ぜた方がよくできるのです。2つ目の段階では、塩水を神社の貯蔵小屋に運び、鉄の大釜で煮て粗塩を作ります。

私は毎年 10 月 5 日に催される御塩殿祭に行ってきました。この祭りが、最終段階である「焼き固め」とよばれる塩焼きの始まりとなります。

午前10時きっかりに、お清めの儀式であるお祓いで祭りが始まりました。この儀式は、神々に供物を捧げる前に、あらゆる悪や汚染を浄化するために行われます。

その後、神職たちは本殿に移動し、塩の守護神に食べ物を捧げます。それぞれの動作は細心の注意を払って実行されていました。何世紀にもわたる伝統の厳粛さを感じました。

奉納後、神職が塩焼きの安全と日本の製塩業者たちの繁栄を祈願しました。そのため、この式典には日本中の主要な製塩会社の代表者たちも出席していました。

祭りは、御塩焼所(みしおやきしょ)という塩焼きをする小屋のかまどへ神主さんのひとりが火入れすることで締めくくられます。数分後、暗い建物内で炎が燃え上がり、重厚な茅葺屋根の下から煙が立ち上るのが見えました。

荒塩が三角錐の土器に詰められ、堅塩(かたしお)とよばれるかたい塩を作るため焼き上げられます。5日間かけて、毎日20個、合計100個の塩が焼かれます。これらの塩は今後半年間、伊勢神宮のさまざまな儀式で使用されます。

さて、あなたはこの神聖な塩がどんな味なのか気になりますよね。残念ながら、これらの塩は神々のためのものであり、一般の人間たちがそれを消費することは許されないため、それについて答えることはできません。そんなあなたのようなグルメな人におすすめできる場所が、御塩殿神社から遠くないところにあります。
神社を出たら、夫婦岩に向かって海沿いを歩きます。夫婦岩を通り過ぎてからも海岸沿いを歩き続け、10分ほどすると「岩戸の塩工房」という工房に到着します。

ここで、チャーミングな百木ご夫妻がお出迎えしてくれました。 2021年、彼らは移転し、小さなショップを併設する新しい工房をオープンしました。事前に電話すれば、百木さんが工房を案内してくれます。

岩戸の塩工房では、2000年続く昔ながらの製法で、汽水を沸かして塩が作られています。最初に目につくのは、工房の裏手にある大量の薪でした。内部には、火入れの工程に使用される2つの長い炉があります。燃える炉と沸騰する塩水は魅惑的な光景でした!

岩戸の塩は全国から注文があり、直接二見に買いに来るお客さんもいます。例えば、百木さんは最近、岩戸の塩についてもっと学びたいという有名な料理人からの訪問を受けました。彼らの成功の秘密とはなんでしょう?市場に出回っている塩の90%以上は、化学的なプロセスで生成されます。それらは生産するのが速くて安価ですが、その過程で栄養素がうしなわれ、栄養が乏しいものとなってしまいます。岩戸の塩工房は、伝統的な、そしてより手間のかかる技術を使用することで、より栄養価が高く、より健康的な塩を生産しています。工房は海と山の間にあり、塩にはその両方の栄養素が含まれています。

お店を出る前に、百木さんが最後のヒントをくれました。 岩戸の塩の上手な使い方は?おにぎりにのせてみましょう!こうすることで岩戸の塩の味をそのまま味わうことができ、ヘルシーなおやつとしても最適です。次回三重県に来るときは、ぜひこの魅力的な文化に触れてみてください。ユニークで価値ある旅になることをお約束します。

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このページの情報は 2022年10月の情報です。

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