三重の宿場町と伝統工芸をめぐる旅 ~関宿を歩き、伊賀焼に親しむ~

三重県中北部に位置する亀山市には、江戸時代(1603~1868年)の宿場町の町並みが今も残るエリア「関宿」があり、歴史情緒豊かな散策を楽しめます。また、北西部の伊賀市は滋賀県甲賀市とともに忍者の発祥の地として有名ですが、伝統工芸品である伊賀焼もよく知られています。

今回、att.JAPANの編集メンバーが三重県主催の日帰りツアープログラムに参加。関宿散策と伊賀焼の陶芸体験を通して、三重の魅力を探ってきました!

旅のはじまり

新幹線で名古屋駅に降り立った後、JR関西線の列車に乗り換え、関宿の最寄り駅である関駅を目指します。道中、近鉄の電車と並走する光景や鈴鹿山脈の山々といった車窓を楽しみました。今回のツアーでは、普段は別のルートを走っている列車が特別に使用されたこともあり、沿線ではカメラを向ける多くの鉄道ファンらの姿を見かけました。

普段は快速「みえ」として運用されるツアー用臨時列車

名古屋を出発してからおよそ1時間20分。列車は関駅に滑り込みました。

関駅でツアー参加者を歓迎する地元の方々

地元の方々の歓迎を受け、駅前のゆるやかな上り坂を5分ほど歩くと、昔の日本にタイムスリップしたかのような町並みが目に入ってきました。それがまさに関宿です。

 

歴史ある宿場町・関宿を歩く

関宿の町並み

関宿の町並み

関宿は、東海道五十三次の47番目の宿場町。かつては参勤交代や伊勢参りなどで交通の要衝としてにぎわいました。およそ150~200年前に建てられた町家が200軒あまり、約1.8kmにわたって立ち並び、当時の情緒を今に伝えています。1984年には、国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されました。通りの古い建物は現在、飲食店や土産店、工芸品店などとして活用されています。伝統を受け継ぐ町らしく、地域の歴史や文化を紹介する資料館や博物館も点在しています。

通りを案内してくれたのは、朗らかな笑顔が印象的なボランティアガイドの服部吉右衛門亜樹さん。珍しい名前ですが、実はこの方は忍びの末裔。先祖は伊賀忍者の首領として知られる服部半蔵の家系です。忍びの隠れ蓑として開業した和菓子店の経営をされています。

関宿ボランティアガイドの服部さん

関の山車(やま)会館

ガラス越しに展示される山車

地元の祭事「関宿祇園夏まつり」で使われる山車(地元では「やま」と呼ばれます)を展示、紹介する施設。高さ4mほどの縦長の山車を間近に見ることができます。

山車の模型

関宿の山車は、街道を道幅いっぱいふさぐ様子から、限度いっぱいを意味する「関の山」という言葉の語源になっています。山車の後方には芸術的な「見送り幕」が飾られますが、道幅に限りのある街道ではUターンが難しいため、逆方向に移動する際は台車の上の部分が回転する仕組みになっています。館内の視聴コーナーでは、祭りで曳かれたり上部が回転したりする山車の映像を英語字幕付きで見られます。

関の山車会館
アクセス:JR関駅→徒歩6分
入館料:大人300円、学生・生徒・児童200円(他2施設との共通入館料:大人500円、学生・生徒・児童300円)
営業時間:9:00~16:30
定休日:月曜(祝日・振替休日の場合はその翌日)、年末年始(12/29~1/3)
URL:https://www.kankomie.or.jp/spot/23557

関宿旅籠玉屋歴史資料館

かつて街道をゆく旅人たちが宿泊した旅籠(旅館)「玉屋」の建物を修復した資料館。マネキンが座る帳場や食膳が並んだ座敷など、旅籠として営業していた時代の様子が再現されています。

帳場。マネキンの質感がなかなかリアル

食膳や布団も配置され、旅籠の雰囲気を如実に伝えます

奥には離れも

関宿旅籠玉屋歴史資料館
アクセス:JR関駅→徒歩10分
入館料:大人300円、学生・生徒・児童200円(他2施設との共通入館料:大人500円、学生・生徒・児童300円)
営業時間:9:00~16:30
定休日:月曜(祝日・振替休日の場合はその翌日)、年末年始(12/29~1/3)
URL:https://www.kankomie.or.jp/spot/3195

建築や町並みの特徴

町家建築の屋根をよく見ると、鯉や龍などの装飾が施されていました。江戸時代の職人たちは、このような意匠で腕を競い合っていたそうです。また、屋根にはその建物での商売が分かるような工夫もされています。

屋根の装飾

器を売る店には屋根に「器」の文字が

器を売る店には屋根に「器」の文字が

江戸、明治、大正(1912~1926年)、昭和(1926~1989年)の各時代の建物が並ぶ場所もありました。歴史豊かな関宿を象徴する光景の一つです。

私たちが訪問した時期はひな祭りの少し前だったため、通りのあちこちに雛飾りが展示され、華やかな雰囲気を醸し出していました。

さまざま時代のお雛様が並ぶ展示

街道から少し離れた位置には地元の温泉を活用した足湯「小萬の湯」もあります。

小萬の湯

ランチは、かつての旅籠を食堂として改装した「會津屋」で。地元三重の米を使い、昔ながらの竈で調理した山菜おこわと、温かいおそばなどが付いた定食をいただきました。出来立てのおこわのもちもちとした食感や、爽やかなゆずの香りが口の中に広がるおそばはとても美味でした。

會津屋の外観

山菜おこわやそばの定食

會津屋
アクセス:JR関駅→徒歩10分
営業時間:11:00~17:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌営業日)
URL:http://www.aizuya72.com/

店を出ると、雪が降っていました。宿場町と雪の取り合わせは幻想的で、浮世絵の世界を彷彿とさせます。

雪降る関宿

こうして私たちは関宿を後にし、車で西隣の伊賀市へと向かいました。

伊賀焼の世界を体験(伊賀焼伝統産業会館)

素朴な風合いと、ゆがみや焦げといった独特の造形美が特徴の伊賀焼。17世紀頃には時の武将らも愛用していたといいます。窯元が点在するエリアにある伊賀焼伝統産業会館では、大小さまざまな伊賀焼の名品を展示していて、その製造工程も知ることができます。

伊賀焼のカプセルトイ(伊賀焼ガチャ)もあり、1回500円で紙に包まれた小皿や箸置きなどをゲットできます。運が良ければ、鉢植えが植物ごと当たるケースも!大きめの商品は当然容器に入りきらないので、代わりに商品名が書かれた紙が入っています。このカプセルトイはTV番組で取り上げられたのをきっかけに一時期話題になり、施設の方によると伊賀焼ガチャ目当てに訪れる人もいたとか。

伊賀焼ガチャ

伊賀焼ガチャの中身の一例

陶芸体験教室(予約制)では、先生役の職人のサポートで自分だけの伊賀焼を作ることができます。せっかくの機会なので、私も伊賀焼作りにチャレンジしてみました!

伊賀焼作りに挑戦!

1kgの伊賀粘土から適量を手に取り、まずはお皿を作ります。丸めた粘土を手のひらでたたいて伸ばし、余計な部分をちぎったり木のナイフでカットしたりして形を整えていきます。縁がいびつになっていまいましたが、先生は「それも味ですよ」と優しくフォローしてくださいました。

皿やカップを作りました

粘土を使い切るため、他にもマグカップや醤油入れに使えそうな小皿を作りました。焼き上がりには1カ月ほどかかります。完成した焼き物は郵送も可能です。

伊賀焼伝統産業会館
アクセス:JR伊賀上野駅→車で25分
営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始(12/28~1/4)
陶芸教室の料金(一例):2,750円(手ひねりコース、粘土1kg)
URL:http://www.igayaki.or.jp/?page_id=23

作陶体験を楽しんだ後、私たちは伊賀上野駅に向かい、名古屋に戻る列車を待ちました。さすが忍者の里・伊賀だけあって、駅構内にも随所に忍者のデザインが施されています。

まとめ

由緒ある建築群や伝統工芸を通して、昔の人々の暮らしや独特の美意識を存分に感じました。また、豊富な展示や資料、整った町並みなどが保全されてそろっているのも、伝統を守り受け継いでいく地元の人たちの熱意があればこそです。日本の歴史や文化により深く親しめる三重の旅に出かけてみませんか。

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ライター
Mitsuki
富士山を望む静岡出身。韓国に4年、中国に11年住んでいました。大学・大学院時代は文学を専攻。街歩き、シティポップ、鉄道や車といった乗り物、高層ビルの展望台などが好きです。甘党です。

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