港町の向こうにある神戸

山と海に囲まれた都市、神戸

神戸は港町として知られています。三宮や元町、異人館。海を望む風景。そうしたイメージの街です。けれど、六甲山の向こう側へも足を伸ばしてみると、少し異なる風景が広がっていました。

 

六甲山の向こうに広がる風景

3月の神戸。気温はまだ10℃を下回りますが、日差しには春の気配がありました。

新神戸駅から出発した車は、海とは反対方向へ進みます。長いトンネルに入ったとき、ふと、六甲山の下を通っているのではないかと思いました。六甲山は、神戸を訪れる際、いつも「海を見下ろす山」として見ていた場所です。その向こう側を意識したことは、ほとんどありませんでした。

トンネルを抜けると、それまでとはまったく違う風景が広がりました。かやぶき屋根の民家が点在し、山に囲まれた静かな里山の風景が広がります。新神戸駅からわずか30分とは思えないほど、空気はひんやりと澄んでいました。

訪れたのは、神戸市北区にある棚田。斜面に沿って段々と広がる水田は、いわゆる観光地の景色とは少し異なる、里山の風景です。ここでは、耕作放棄地を引き継いだ団体が米作りを続けています。田んぼや水辺を維持することで、生き物のすみかも守られています。

都市のすぐそばに、こうした風景が残っています。

棚田の田植え(6月頃)

 

棚田の生態系を守る方々。棚田の生き物について説明してくださる地元のはNPOスタッフ「里地・里山の保全推進協議会/兵庫・水辺ネットワークの大嶋 範行さん。

神戸の野菜

神戸といえば、神戸ビーフという印象が強いかもしれません。けれど、実際に訪れてみると、野菜の存在も印象に残りました。

六甲山の北側には農地が広がり、神戸のレストランでは地元で採れた野菜が日常的に使われています。「こうべ旬菜」と呼ばれるブランドもあり、市内で育てられたものがそのまま市内で消費される仕組みも整っています。

神戸市西区でキャベツを育てる農家

 

都市のすぐそばで育つ神戸の野菜

 

取材の中で、もうひとつ興味深い話を聞きました。神戸市では、下水から回収したリンを肥料として再利用し、その野菜を育てる取り組みも行われているのだそうです。

こうべハーベスト:下水から回収したリンを再利用してつくられた肥料

田園風景の中のカフェ「C-farm café」:元プロ野球選手が始めた、農業と食の挑戦

神戸市西区の田園地帯にある「C-farm café」は、地元食材を味わえる人気のカフェです。2022年にオープンしたこの店では、有機野菜をふんだんに使った料理を提供しています。

このカフェを運営するC-farmを立ち上げたのは、若手農家のクリスさん。かつてプロ野球選手として活動していましたが、2019年に引退し農業の道へ進みました。「食」を入り口に農業に興味を持ってもらいたい。そんな思いから、畑の隣にカフェを作りました。

田園風景の中で味わう、神戸の野菜

 

月替わりのランチプレートには、神戸産の食材が使われています。敷地内では農業体験もでき、ヤギも3匹飼われています。公共交通機関で行くには、実は少し不便な場所。けれど、ランチタイムには途切れることなくお客さんが訪れていました。

地元の野菜を味わう一皿

下町市場の変化

1995年1月17日、阪神・淡路大震災が神戸を襲いました。長田区では大規模な火災が発生し、多くの住宅や店舗が焼失しました。かつてケミカルシューズ産業で栄えたこの下町は大きな被害を受け、街の風景は大きく変わりました。

震災後、空き家や空き店舗が増えたこの地域で、それらを活用した新しいプロジェクトが次々と生まれています。古い建物をリノベーションし、カフェやアトリエ、コミュニティスペースとして再生する取り組みです。アーティストやクリエイターが移り住み、下町の空気と新しい文化が混ざり合う街へと変化しています。その象徴のひとつが、1922年に創立し100年以上続く丸五市場です。

昔ながらの市場が、今も日常の中に残っています。

震災を乗り越えて続く市場

丸五市場のカフェ「Spice Up」

市場の中にある「丸五Spice Up」。元魚屋の店舗を改装したカフェで、店内には創立当時の壁や魚屋時代の床がそのまま残されています。そこに現代的なデザインが加わり、異なる時間が重なったような空間になっていました。

古い市場に生まれた新しいカフェ。代表の首藤義敬さん

この店では、医療・介護職の経験者や障害のある人もスタッフとして働いています。車いすでも働きやすいよう、厨房は広く設計されていました。

店のテーマは「スパイス」。クミンシードなどを使った料理やカレーが楽しめます。また、市場の他店で買った料理にスパイスを加えて提供する「フルコース」のイベントも行われています。

神戸らしいスパイス文化

通りから小さな入口に入り、狭い通路を進んでいくとあらわれる、ちょっとカオスな空間。地元の人も観光客も、さまざまな人が同じ場所に集まっていました。

Travel Info

神戸へのアクセス

東京 → 新幹線で約2時間40分 → 新神戸駅
大阪 → 電車で約30分 → 三宮
関西国際空港 → 電車で約1〜1.5時間 → 三宮

 

棚田についての問い合わせ

神戸市環境局自然環境課 0570-083-330または078-333-3330

 

こうべ旬菜についての問い合わせ

神戸市経済観光局農水産課 0570-083-330または078-333-3330

 

こうべハーベストについての問い合わせ

神戸市建設局下水道部計画課 078-806-8904

 

C-farm cafe

住所 兵庫県神戸市西区平野町印路26-1
電話 078-995-8859
営業時間 11:00-17:00(L.O16:30)
定休日 月曜
公式サイト https://c-farm.jp/
Instagram https://www.instagram.com/cfarm.jp/

 

丸五Spice Up

住所 神戸市長田区二葉町3-11-2(丸五市場内「そば焼 いりちゃん」向かい)
電話 078-646-2088
営業時間 予約制 ランチ 11:30-15:00(L.O14:00)
定休日 不定休 おおむね週3回営業
Instagram https://www.instagram.com/marugo_spice_up/

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ライター
原 陽子(HARA Yoko)
元att.JAPAN編集長。日本各地を旅し、土地に流れる時間や空気をすくい上げながら、日本の魅力を再発見している。文化や背景をストーリーとして編むコンテンツ制作を行う。連なる山々を眺めながらコーヒーを味わう時間が、何よりの楽しみ。