飛騨市観光協会_R.webp)
年間多くの観光客が訪れる飛騨高山。その賑わいから、ほんの数駅北へ向かうと、空気がすっと静かになります。山に囲まれた小さな町、飛騨古川。ここには、観光地のように整えられた風景ではなく、「そのままの暮らし」が静かに続いています。
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年間多くの観光客が訪れる飛騨高山。その賑わいから、ほんの数駅北へ向かうと、空気がすっと静かになります。山に囲まれた小さな町、飛騨古川。ここには、観光地のように整えられた風景ではなく、「そのままの暮らし」が静かに続いています。
Fish, Fish!
外国人のグループが、あちこちで立ち止まっては写真を撮っている。並んだり、ジャンプしたり、また少し歩いては撮る。
何をしているのか気になって、声をかけてみた。
「Fish、Fish。ほら、ここにもいるでしょ」
指差す先には、マンホールや敷石に描かれた鯉の絵。どうやらそれを見つけては、みんなで写真を撮っているらしい。

どこから来たの?
「フィリピン。」
楽しそう!みんなの写真を撮ってもいい?
「Sure!あなたも一緒に!」

観光客と町との距離が、どこか近い。飛騨古川の最初の印象でした。
飛騨古川駅に降り立って感じたのは、山が近いこと、そして静かなことでした。観光地として知られる高山から、列車でほんの15分しか離れていないのに、人の気配がぐっと少なくなります。
この町には、白壁の蔵や鯉が泳ぐ水路といった美しい風景があります。けれど、それ以上に印象に残るのは、「見せるためではない暮らし」がそのまま続いていることでした。

飛騨古川は、増島城を中心に築かれた城下町です。
増島城は、16世紀、武将・金森長近が飛騨国支配の拠点として築いた平城です。武士と町人の住む場所が分けられ、川がその境界となっている町の作り。これは、金森氏の本拠の高山城と同じ構造で、金森氏のまちづくりの特徴だそうです。
歩いていると、その名残が自然と目に入ってきます。整然とした区画や、水路に沿って続く町並み。観光のためではなく、暮らしのために作られた構造が、そのまま残っているのです。
増島城跡(櫓台の石垣と堀の一部が残っています)
白壁の蔵が並ぶ瀬戸川には、多くの鯉がゆったりと泳いでいます。特別な演出ではなく、日常の風景としてそこにある光景です。
冬になると、鯉たちは近くの池へ移され、春になると再び川へ戻されます。その作業は、地元の人たちが協力して行う季節の行事でもあります。
町の暮らしとともに、この風景は保たれているのです。



通りを歩いていると、気になるお店がありました。「おかずや山本」。地元の人たちが普段使いする惣菜店です。
飾り気のない看板の下、店内には家庭的なおかずがずらりと並びます。客はフードパックを片手に、思い思いに料理を詰めていきます。
地元で人気のお店で、ランチタイムや夕方には店内が人でいっぱいになるそうです。
一番人気は唐揚げと聞き、迷わず唐揚げを。煮豆、かぼちゃ煮、郷土料理のこも豆腐などを詰めました。どれも美味しそうで迷いましたが、食べきれそうな分だけに。
こも豆腐は、わらで豆腐を包んで茹でたもの。表面にできた無数の気泡により、出汁で煮込むと味がよく染み込み、噛むとジュワッと旨味が広がります。




古川には、渡辺酒造店と蒲酒造場という2軒の造り酒屋があります。
白壁の町並みに溶け込むように建つ酒蔵。中に入ると、ひんやりとした空気と木の香り。老舗らしい落ち着いた雰囲気が漂います。
地元の行事の際にもふるまわれるというこの2軒のお酒。
「飛騨の料理はしょっぱくて味が濃いでしょ。お酒が進むのよ」と言う地元の方。この町では、酒も特別なものではなく、暮らしの延長にあるのかもしれません。




普段は静かなこの町も、春になると一変します。
毎年4月に行われる古川祭では、町全体が熱気に包まれます。
最大の見どころは絢爛豪華な「屋台曳行(えいこう)」と勇ましい「起し太鼓」。


飛騨古川まつり会館では、毎年4月19日・20日に開催される古川祭を、一年中体験できます。
静けさの中にある日常と、年に一度の熱狂。その両方を持っていることも、この町の奥深さかもしれません。
この静かな町は、アニメ『君の名は。』のモデルの一つとしても知られています。


飛騨古川には、「見せるために整えられた風景」は多くありません。この町の魅力は、特別な場所というよりも、日常の風景の中にあるのだと感じました。
有名観光地のすぐ隣にありながら、少し違う時間が流れている場所。
その静けさは、旅のあとにも残っています。

東京駅→高速バスで6時間→飛騨古川駅
東京駅→新幹線のぞみで1時間40分→名古屋駅→JR特急ひだで3時間→飛騨古川駅
東京駅→新幹線かがやきで2時間→富山駅→JR特急ひだで1時間15分→飛騨古川駅