日本の原風景が残る、丸山千枚田

昔の日本の素朴な姿を想像すると、何が頭に浮かびますか?多くの人々は、山肌に沿うように段々に作られた田んぼ、日の光にきらめくその田んぼの水面、風にそよぐ木々の緑を思い浮かべるかもしれません。そのような田んぼは棚田と呼ばれ、山が多いこの国のいたるところでかつては見られ、多くの人が日本の原風景として思う風景です。

丸山千枚田

今日、棚田は農業の機械化が進み高齢化社会のため急速に消えつつあります。しかし、今でもこの美しい棚田が過去と同じように輝きを放っている場所があります。それが三重県の丸山千枚田です。

日本でも最も美しい風景のひとつとして知られ「日本の棚田100選」にも選ばれたこの地域は、1000枚の田という意味で「千枚田」と呼ばれます。実際、白倉山の南西の斜面にはあらゆる形と大きさの1340枚の棚田が広がっています。今日、日本最大級の規模を誇る棚田ですが、4世紀前には2240枚という記録が残っています。

この棚田を作るために、高低差150mのところに石垣で水平を保つといった大変な労力を想像すれば、棚田がなぜ日本のピラミッドと呼ばれるのかは容易に理解できます。

丸山地区では、紀和町の鉱山のまわりに誕生した町の人々が食べるために稲作が進められたと言われています。さらに、昼と夜の温度差が大きいことも稲作に適した空気の流れを作っています。しかし、歴史の流れはそうはなりませんでした。鉱山は最終的に閉山し、棚田は減少しはじめ、1990年代までに500枚までに減ってしまいました。ことのき、丸山の地元住民は千枚田を保存するための組織を作り、そして今日までこの貴重な原風景を残そうと活動を続けてきました。

熊野古道が世界遺産に認定されたことも大きな契機となりました。丸山千枚田のビュースポットのひとつが熊野本宮大社に向かう本宮道の支道、北山道の「通り峠」です。熊野古道の世界遺産認定は、地元の伝統の復活、たとえば、毎年6月に行われる「虫おくり」というイベントの復活にもつながりました。虫おくりというのは、虫に別れを告げるという意味です。農薬ができるまで害虫駆除として行われ、1340個のろうそくの光が棚田の斜面を暖かく照らし、ろうそくの明かりが、棚田の水面に静かに反射する夜の星と混ざり合うたびに、夜の棚田をロマンティックな過去の光景へといざないます。

しかし6月の虫おくりだけでなく、ここは1年中美しい場所です。5月から7月、棚田にはられた満々とした水は山肌を鏡のプールのようにし、1片1片の鏡が空を映し出します。夕日というものはそれだけで美しいですが、1000枚の棚田に映し出された夕日の光景は息をのみます。多くの人々は、早朝、濃い霧に覆われていた谷が、霧がゆっくりと晴れていくにつれ、1枚1枚、棚田が姿を現す光景を好むでしょう。車で走っていれば、突然視界が開け千枚田が現れるので、県道40号を走っているときには気を付けましょう。素晴らしい景観に気を取られ、運転に集中できなくなるかもしれません。

この古きよき魅力とさらに関係を深めたいなら、オーナー制度という仕組みがあります。これに参加すれば、田のオーナーになってコミュニティの活動に参加し、収穫したコメを分けてもらい、村人の指導のもと稲刈り体験ができます。棚田で機械を使うことは難しいため、農作業はほとんどすべて手作業になります。毎年100人以上のオーナーが登録し、都会の人が、日本の最も大事な主食についての歴史や自然、文化についてあらためてつながる機会となっています。

オーナーたちの努力が実ることを祈ります。棚田は愛らしい側面だけではありません。雨が降れば地すべりを防ぎ、地面が崩壊するのを防ぎ、生物の多様性を維持するなど、主要な恩恵は語りつくせません。大地からの学びは、生産されるおいしい米以上に実りあるものかもしれません。

この記事は「三重県観光連盟公式サイト観光三重」からの転載です。
https://www.kankomie.or.jp/en/report/detail_181.html

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このページの情報は 2021年10月の情報です。

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