国宝・備前刀「山鳥毛」、「備前長船」へ里帰りプロジェクト

岡山県瀬戸内市では、戦国武将・上杉謙信の愛刀で、備前刀の最高峰と言われる国宝「太刀無銘一文字(号・山鳥毛/やまとりげ)(*通称:さんちょうもう、現在は個人所有)を、生まれ故郷である「備前長船」に戻す「山鳥毛里帰りプロジェクト」を2018年11月1日(木)から実施します。10月23日に、東京都内でこのプロジェクトの記者会見が行われました。

国宝・備前刀「山鳥毛」、「備前長船」へ里帰りプロジェクト

(写真:記者会見 山鳥毛レプリカの展示)

瀬戸内市長武久顕也氏、公益財団法人日本刀文化振興協会評議員ポール・マーティン氏、東京国立博物館研究員佐藤寛介氏と刀工川島一城氏が出席し、「山鳥毛里帰りプロジェクト」の実施背景、実施方法とその意義を説明されました。

(写真:(右から)瀬戸内市長武久顕也氏、公益財団法人日本刀文化振興協会評議員ポール・マーティン氏、東京国立博物館研究員佐藤寛介氏と刀工川島一城氏)

現在、日本国内だけでなく、海外でも日本刀への関心が高まっています。この状況の中で、「山鳥毛里帰りプロジェクト」は日本刀再ブームの波に乗り、さらに日本国内外に日本刀の価値を広め高めていくと期待されています。

(写真:山鳥毛レプリカ)

備前長船――日本刀の聖地
日本刀は鉄の芸術として世界的にも高く評価され、日本を代表する芸術的な美術工芸品です。岡山県は古くから優れた刀剣を数多く産出しています。中でも、「備前長船」として知られる瀬戸内市長船町(おさふねちょう)を中心とした地域は、中世を通じて全国一の日本刀の生産量を誇ります。
国宝や重要文化財に指定されている日本刀の約半数を備前刀が占めていることから、「日本刀の聖地」とも呼ばれてきました。現在、国宝になっている刀剣類111口(ふり)のうち、47口が備前刀です。

(写真:瀬戸内市長武久顕也氏と山鳥毛レプリカ)

国宝「山鳥毛」――資産価値5億円以上
「山鳥毛」は備前刀の最高峰と言われていて、『太刀 無銘一文字 山鳥毛(やまとりげ)』を文化財登録名として日本の国宝に登録されています。「山鳥毛」は戦国武将・上杉謙信の愛刀として、かなり高い歴史的価値を持っています。
また、「山鳥毛」という名前の由来は、その変化にとんだ激しい刃紋(はもん)が、「山鳥の羽毛のようだから」とも「山野が燃えるようだから」ともいわれます。

(写真:山鳥毛レプリカの刃紋)

東京国立博物館研究員の佐藤氏によれば、「山鳥毛」の複雑な刃紋は奇跡的に生まれた偶然の産物で、神の一手とも言えるそう。「美術品として、『山鳥毛』の力強さと華やかさは備前刀のみならず、日本刀全体を見渡してみても、最高傑作の一つです」。

(写真:山鳥毛レプリカ)

有識者による外部評価委員会が評価によれば、「山鳥毛」の資産価値は5億円以上とのことです。

(写真:東京国立博物館研究員佐藤寛介氏(左))

刀剣文化保護の危機に直面
しかし、現在、この「山鳥毛」は生まれ故郷の「備前長船」には保有されておらず、岡山県内の個人が所有しています(岡山県立博物館に寄託)。同地域にある備前長船刀剣博物館には、国宝・重文級の刀剣は一口も所蔵されていません。

(写真:山鳥毛レプリカ)

また、現在「備前長船」の刀工は瀬戸内市内でわずか7人。刀剣の伝統文化や技術の継承が危ぶまれています。このような状況の中、瀬戸内市はこのたび「山鳥毛里帰りプロジェクト」を立ち上げたのです。

(写真:刀工川島一城氏(左))

「山鳥毛里帰りプロジェクト」の概要
このプロジェクトでは、瀬戸内市が「山鳥毛」を購入するために、市民の税金に頼らず、同刀の評価額である「5億円」の資金を調達することを目標に、市として初となる国内および国外に向けたクラウドファンディングを実施します。

武久瀬戸内市長によれば、主に三つの手法を組み合わせて、資金を調達する予定。理想としては、「ふるさと納税を基本としたクラウドファンディング」が2億8千万円、「海外でのクラウドファンディング」が2千万円と「企業版ふるさと納税」が2憶万円を調達するスキームとなっています。「ふるさと納税を基本としたフラウドファンディング」と「海外でのクラウドファンディング」の寄付者は返礼品がもらえます。(*条件あり)

(写真:瀬戸内市長武久顕也氏)

もし、瀬戸内市が「山鳥毛」を購入することができれば、「山鳥毛」が現在の寄託先である岡山県立博物館から瀬戸内市が管理運営する備前長船刀剣博物館へ移ることになります。そして、それは、子供たちの教育や地域の活性化に寄与、備前刀の素晴らしさを世の中に伝え、海外にも日本の伝統文化を発信、刀工たちの作刀意欲と技術の向上といった大きな社会的意義を持っています。

(写真:山鳥毛レプリカ)

また、観光面からも、全国から、また世界から来訪する人々が増加すると期待されます。瀬戸内市を訪れた際には、瀬戸内市独自の文化である刀剣文化に触れ、市内の自然の豊かさや食べ物の素晴らしさを感じることができるでしょう。

(写真:公益財団法人日本刀文化振興協会評議員ポール・マーティン氏(左))

 

【クラウドファンディング概要】
■期間
2018年11月1日(木)~2019年1月31日(木)(予定)
(海外:2018年11月1日(木)~2019年12月31日(月))(予定)

■受付方法
ホームページ特設サイトやクラウドファンディングポータルサイトからの申込み、受付窓口および振り込みにて受付
「『山鳥毛里帰りプロジェクト』クラウドファンディング瀬戸内市特設サイト」(https://setouchi-cf.jp/
「ふるさとチョイス」(https://www.furusato-tax.jp/gcf/446)
「ふるなび」(https://fcf.furunavi.jp/Project/Detail?projectid=30)
「Kickstarter」(アドレス未定)

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このページの情報は 2018年10月の情報です。
ライター
att.JAPAN編集部
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